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ハタチの誕生日に明治時代にトリップした話

第2章 第七師団


ちょっと待って。何を言っているんだこの人は。

『月島はかおりのことが好きなのか』って、一体どこをどう見たらそんな風に思うんですか!?この仏頂面の、どこをどう見て!?

鯉登少尉、あなたの目は節穴ですか?
それを言うなら『かおりは月島のことが好きなのか?』だと思いますよ。それならば、私ははいと答えてしまうかもしれない。

ただ、それはそれでクラスに一人はいる片思いの子をくっつけてあげようと余計なお節介を焼く委員長キャラみたいで鬱陶しいですが。

ほらほら、月島軍曹もめちゃくちゃ眉間にシワを寄せて「何言ってんだこいつ」って顔してるじゃないですか。

「・・・・・・・・・嫌いではないです」

月島軍曹は上司の突拍子もない質問に答えねばとしばらく思案し、とても当たり障りのない答えを返した。

告白したわけでもないのに、謎のフられた感。

「本当か?本当に好きではないのだな?」

何故か軍曹の答えを疑っている鯉登少尉は、追い打ちをかけるように続けた。

「はい」

月島軍曹はまるでこれも仕事のひとつだとでも言わんばかりに、相変わらず淡々としている。

ダメです。
ちょっといいなと思っていた人が、自分のことを全くなんとも思っていないのだと痛感させられて、今にも私の心が折れそうです。

一刻も早くこの場を立ち去りたいのだけれど、何分私は今この廊下を掃除している真っ只中。記憶喪失設定の厄介女を何も言わず雇ってくれているというのに、職務放棄するのはとっても気が引ける。

お願いだからどっか行ってください、2人とも。

「ただ・・・」

私の切実な願いもむなしく、月島軍曹はまだ何かを言おうと口を開いた。
鯉登少尉と私の視線が同時に軍曹に向けられる。

「面白い方だな、とは思います」

「・・・・・・は?」

月島軍曹の言葉を聞いて、今度は鯉登少尉がアホ面を晒す番となった。
言葉を聞いてというよりは、その表情を見て、といった方がいいかもしれない。

いつも表情を崩さない月島軍曹が、ほんの少しだけれど、眉尻を下げ微笑んでいたのだ。本当にほんっの少しだけれど。

鯉登少尉はそれに気付いて目を丸くしている。

かくいう私も口をぽかんと開け、少尉に負けず劣らずのアホ面をしていると思う。

先日、一瞬見られたと思った月島軍曹の笑顔。やはりあれは気のせいではなかったのかもしれない。
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