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ハタチの誕生日に明治時代にトリップした話

第2章 第七師団


「かおりさん!大丈夫ですか…っ」

バタンと大きな音を立て、月島軍曹が勢いよく部屋の扉を開けた。

その目に飛び込んできたのは、頭突きをかましてやろうと身構える涙目の私と、私に覆い被さり今だにキスを迫る男の姿だった。

「月島さん…っ!」

「かおりさん!」

助けを求むて名を呼ぶと、月島軍曹は目にも止まらぬ速さでベッドまで駆け寄り私の上に居座る男を簡単に投げ飛ばしてしまった。
か、かっこいい〜!

床に転がる男は背中への衝撃で気を失ったようで、手足を投げ出したまま動く様子はなかった。

それを視線で確認して、ほっと胸を撫で下ろす。助かった…。

「ご無事ですか、かおりさん!」

「な、なんとか…?」

軍曹が来てくれたおかげで最悪の事態は回避したけれど、無事だったかと言われると微妙な気もする。

よく知らない男に太ももと胸を触られ、無理矢理キスをされそうになって。
両手首を見ると、押さえ付けていた男の手の跡がくっきりと残っていた。

ああ、ダメだ。
ガタガタと、今になって身体が震えてくる。
恐怖から解放されたというのに、涙が一気に溢れ出てきた。

「ふぇ…こ、こわかったぁぁ…」

小さい子供のように、声を上げて泣いてしまった。
大の大人が恥ずかしいと思うけれど、一度吹き出してしまったら止まらない。

月島軍曹はえんえんと声を上げ本格的に泣き出してしまった私をその胸へと抱き寄せ、背中を優しくさすってくれた。
ワンピースの裾が捲れ太ももが晒されているのに気付くと、さりげなく直してくれる。

圧倒的優しさ…!

月島軍曹ずるいです。
こんなの、優しすぎて好きになっちゃうじゃないですか…!

鯉登少尉のことああ言ったけど、私も大概チョロいのかもしれない。

「かおりさんが昼食の準備に来ないと連絡を受け探していたのですが…すみません。もう少し早く気付いていれば…」

背中をさすりながら、月島軍曹は申し訳なさそうにそう零した。
助けてくれたのになんで謝るんですかこの人は。

「あ"や"ま"ら"ないでぐだざい…づぎじま"ざんは、わだじの"お"ん"じん"でず…!」

泣きじゃくっているせいか、ほとんどの文字に濁点が付いてしまった。ちゃんと聞き取れただろうか。

月島軍曹を見上げると、訝しげに眉根を寄せている。

あ、やっぱり伝わらなかったですか?
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