第2章 第七師団
マズイ。これは非常にマズイ状況になってしまった。
眼前には屈強な軍人、背後にはベッド、身体は足で挟まれ、両手首は相手の左手で一纏めに押さえつけられ全く身動きが取れない。
彼の右手がワンピースを捲り上げる。露わになった太ももに再度触れられた。
やわやわと感触を確かめるように何度も上下した後、じわじわ上へと向かってくる。
「や、やめてください…っ」
もう一度やめるよう懇願するも、彼の耳には届いていないようだった。
ゆるゆると身体を嬲る右手は一度下着に触れたが、そのままさらに上を目指して動き続けた。
お腹を撫でられ、胸へと到達する。彼の手が触れているのが下着越しにわかってゾッとした。
「かおりさん…、好きです…」
いえいえ私は貴方のことなんて好きじゃありませんから!
「やめて下さい!離して…!」
強めに抗議の声を上げるも、右手は構うことなく侵入を続けた。
少し躊躇いがちに下着の上から胸を揉まれる。
おい!今「柔らかい…」って呟いたの聞こえたからな!
その手が下着を剥ぎ取ろうとしているのがわかった。
あああ、ダメダメ!これ以上は絶対ダメ!
身体を大きく揺らして抵抗するも、力で敵うはずもない。足をバタバタさせて暴れても、いとも簡単に押さえつけられてしまう。
ヤバい。マジでこれはヤバい。所謂貞操の危機ってやつじゃないか。
じわりと目尻に涙が浮かぶ。
ああもう!尾形さんがあんなフラグ立てるから!
ここにいない人を責めても仕方がないし、ましてや尾形さんのせいじゃないことなんてわかっている。
尾形さんは忠告してくれたのに、良い人だからと油断していた自分が悪いんだ。
「…かおりさん」
目の前の彼が私の名前を呼ぶ。その目は虚ろで完全に自分の世界に入っているようだった。
右手で胸に触れたまま、男の顔が近づいてくる。
え?え?え?これってもしかしてキスしようとしてる?
やだやだやだ!名前も知らない男とキスするなんて、絶対にやだ!
「嫌…!やめて…!」
必死にジタバタもがいてもびくともしない。軍人の力どうなってんだ。
その間にも男との距離は縮まっていく。
30センチ。20センチ。男が目を閉じた。
「この…っ!やだって言ってんでしょー!!!」