依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第24章 二人の景色
三口コンロの奥の五徳で、沸々と湯気を出す炊飯鍋。
手前の一つにかけられた片手鍋に水が張られている。
「スパゲティなのに、米炊くのか?」
キッチンと対面するダイニング側に回わり、カウンターに手をついたシャンクスは、しかも鍋で、と野菜とベーコンを刻んでいる🌸に聞いた。
「ロー用にね。あいつ、夜にお米食べないと寝付けないの」
変な体質だよね、と笑っている🌸が好きだ。けれど、その笑顔にムッとする。
「随分、あいつに詳しいな」
「んー?ああ、まぁ、同級生の腐れ縁だし」
切った根菜類を鍋の水に入れると火を付けて、今度はトマトとチーズを刻んでガラス皿に入れる。
「家族にお世話になってたから」
味付けされたそれがカタン、とカウンターに置かれた。
(「なってた」か)
過去形の言葉に、なんとなくの彼の事情を察してテーブルへとサラダを橋渡しする。
「Mrs.フィアンセは?」
「🎀?🎀は幼馴染で、あの子のきょうだいとも仲良いの。あんな感じだけど5人きょうだいの長女なんだよ。昔から妹弟のお世話ばっかりしてたから、今更甘えたいんだよね」
その矛先が親ではなく婚約者に向かっているのは、それも事情なのだろう。と背景を汲み取る。
目線を寄越した🌸に少し笑いかけると、ううん、と首を横に振って、オリーブオイルが和えられたきのこが入った耐熱容器をレンジに入れた。
火の様子を見て、奥のコンロから炊飯鍋を下ろす。蓋が開くと、ふわりといい香りがした。
「炊きたての米の匂い、久しぶりに嗅いだ」
うまそう、と眺めるシャンクスを横目に仕上げのバターを落としてしゃもじで混ぜると蓋をした。
ちょうど、レンジが音を立てる。
きのこに味付けをしてカウンターに置く。
サラダと同じように、シャンクスが橋渡しをしてテーブルに並べられた。
大きめの鍋に水を張って、強火で沸かす。
スパゲティの袋を見て、7分ね、と茹で時間を確認した。
コトコトとなり出した根菜類の鍋から、おたま一杯掬ったお湯を小鉢に入れ、コンソメを溶かす。
あらかた溶けたところで鍋に戻し、柔らかくなった野菜が崩れないように混ぜて固さを確かめる。
合間に作ったコーヒーをシャンクスが手に取ったのと、🌸の携帯がメッセージを受信した音、訪問者を知らせるベルの音が鳴ったのは同時だった。