依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第57章 オーロジャクソンハウス
えっと、と携帯に向かう🌸。
バスケットを手に宴の中へと向かったマキノは、シャンクスを探した。
探す、という暇もなく、すぐに見つかる赤い髪に立ち寄る。
「社長さん」
「ん?おお、マキノさん!」
いつも悪いなぁ、と笑うシャンクスの手にはプラカップ。
「呑んでるんですかっ!?」
ん?とマキノが指差す手元を見て、へらり、と笑う。
「飲んでないさ。お茶だよ」
あれ、と指さしたのはシートの上にあるペットボトルのお茶。
酒屋の主人が持ってきた緑茶を注いだ時にできた気泡が、ビールのそれに見えただけだったようで安堵する。
「🌸ちゃん、社長さんがお酒飲んでると思って、一人で帰る方法探してますよ?」
ほら、と携帯とにらめっこしている🌸を指す。
「🌸ちゃん、最近体調が良くない時があったって聞きました。
いいんですか?あまり遅くなるとお仕事とか」
心配そうに🌸を見やるマキノ。
それもそうか、と時間を確認して、そろそろ切り上げたほうがいいか、と膝に手をかける。
「あれ?あの人...」
マキノの声に顔を上げると、ベンチに腰掛けた🌸に声を掛ける人影があった。
眉根を寄せたシャンクスの左手に握られていたプラカップが、パキッと音を立てる。
「マキノさん、あいつは...」
「え?うーん、あっ多分酒屋さんの息子さんです」
確かに、よく見ると一升瓶ケースか瓶ビールケースを抱えている。
「ったく」
拉げたプラカップを放り、シートの脇に脱いでいた靴を履く。
「少し目を離すとすぐ男に捕まる。
ウタより目が離せやしねぇ」
ぶつくさ言いながら大股に🌸の元へと向かうシャンクスに、マキノはふふ、と笑う。
「いいなぁ」
🌸へと少し駆け足に向かう姿に、黒髪の癖っ毛の後ろ姿を重ねる。
「...だめね」
残された拉げたカップを拾う。
あの日、拙く、必死に想いの丈を告げた彼も、ジュースを飲んでいたカップを握りしめていた。
そばかすが可愛い、と言うと、照れて隠していた頬を赤くして。
待っていてほしい、と言ってくれた彼を乗せた船が来る気配は、また少し、遠い気がした。
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