依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第24章 二人の景色
彼の自宅のあるビルに着くと、地下ではなく、裏の通用口隣のスペースに車が停められた。
地下じゃないんだ、と内心ちょっと安心していると、早々にシートベルトを外して車外に出ていたシャンクスに外から助手席の扉を開けられた。
「ほら」
差し出された手を取って降りる。
そのまま手を繋がれて歩き出した彼についていく。
「車は?」
「またすぐに出るから地下まで入れる必要ない」
気を使ってくれたのだ、と気づいて、ありがとう、と口には出さずに少し後ろをついていた足で隣に駆け寄った。
幾度か通った通路を抜けると、エレベーターを待つ。
最上階につくと見慣れた扉。一緒にくぐると、リビングで待ってろ、と廊下の先を示された。
寝室とは別の部屋に入っていくのを見送って、正面の扉を開ける。
朝、目が冷めた大きなソファ。パソコンを置いていたテーブル。壁の大型テレビ。あまり使っている様子が見受けられないダイニングセットは6人掛け。
広いキッチンもほとんど活用されていないみたいで、一式の食器はあるけれど洗い物かごが見当たらない。棚に調味料や調理器具もない。料理はしないんだろうな、と思い、自宅の冷蔵庫が空であることを思い出した。
木目とモノクロで揃えられた部屋で唯一彩り鮮やかなのは、天井のペンダントライト。
「なんか、面白いもんでもあるか?」
する、と背後から伸びてきた腕が首に回る。ワイシャツの袖をクシュと掴んだ。
「料理はしないんだろうなぁ、って見てた」
「ああ、しない」よくわかったな、と苦笑いしている。
「できないからしない?できるけどしない?」
「できないこともないはず」
中途半端な回答に彼を見上げる。
「昔はしてたからやろうと思えばできるはずだが、何年もやってないから自信がないな」
「なるほど」「🌸は、自炊する方だろ」
使われているキッチンだった、と軽いキスをされる。
「🌸の手料理、食ってみたい」
スリ、と首筋にすり寄られてビクッと身体が震える。
「大層なもの、作れないよ」「なんでもいい」
「ブルーベリーパイでも作る?」
彼が嫌いだと言っていたのを思い出して、少し、意地悪をする。
「🌸が口移しで食べさせてくれるなら食べないこともない」
「パイを口移しって難しくない?」
パイの実サイズならギリいける?と恍けている🌸に、プッ、と吹き出した。
