依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第23章 その本質
「〜♪」
ご機嫌だ、と繋がれた手を引く横顔を少し後ろから見上げる。あの後、ちょっと待ってろ、と控えブースに残されて15分もしないうちに戻ってきた。帰ろう、という言葉で引き立てられて、仕事はもういいのかとか確認する暇もなく連れ出された。
あ、と言ってピタリと止まった背中に鼻がぶつかる。
「急に止まらないでっ」「悪い悪い」
ごめんな、と振り返ってぶつけた鼻先を撫でられた。
「ご褒美、忘れてたと思ってな」「ごほーび?」
鼻を抑えていたせいで、鼻声になる。
「忘れたか?クイズのご褒美」
今更?と言う🌸の耳元に唇を寄せる。
「『ゆっくりする』は反故にしちまったから」
バッと離れて見上げた顔は、ちょっと意地悪く笑っていて(わざとだっ!)と気付く。今まで散々誂われたのだ。幾らかその表情を読み取れるようになってきた。
「なんでもいいって言ったよね?」「ああ」
確認を取って、ふむ、と気を立て直す。しかし、なかなかすぐには浮かばず、考え込む。
「癖なんだな」「へ?」
何が?と見上げると、頬に手が添えられて、親指の腹で唇を撫でられる。
「キスがしたいのかと思ってた」
「え?は?」
「考え込む時に、こうやって唇を撫でる癖があるだろう」
スッ、と左手でその仕草を真似をされて、ドキリ、とした。
「てっきり口寂しいんだと」「違う違う!」
あらぬ誤解を招いていたことに慌てて否定する。
「気づいてなかったのか?」
「い、今の今まで!そういえば、そうかも??」
そう言って、また撫でる指先に口づけをする。
「それで?ご褒美は思いついたのか?」
「えっと、ちょっと待って。考える」
ん、と唇を撫でる指先にキスしたまま目を閉じるシャンクス。少し猫背の体制がキツくないんだろうか、と思いながら早く開放してあげないと、と思考を回す。
「あ」「なんか、思いついたか?」伺う瞳に頷く。
「スクリーンで映画見せて」「はぁ?」
「ほら、寝室にプロジェクタあったでしょ?」
あるけど、とポケットに手を突っ込んで背筋を伸ばす彼の怪訝そうな顔。
「『カサブランカ』と『ガラスの塔』が好きなの。『風と共に去りぬ』にそう!『Needing you』を一度きちんと見てみたい!」
いつか、と夢見ていた大画面での名作鑑賞が叶う!と約束を取り付けると、ドキドキしていた気持ちも落ち着いて、何から観ようか、とワクワクしてきた。
