依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第22章 こたえあわせ
ステージでの挨拶の間、2階のエスカレータ横にその姿を見つけた。
退檀の時、軽く合図をすると、無理やり振られる右手。
目立つのを好む性格じゃないのは重々承知している。
けれど、掴まれたままの右手を自ら振り返してくれた。
笑顔で。
ちょっと困ったような、それでも苦笑というわけではなく、恥ずかしそうにはにかんでいた。
その笑顔にまた、ぶわりと身体に熱が回った。
✜
逃し様のわからない熱をどうにかしてほしい、と🌸に押し付けるが、拒絶される。幾度か食んでも、舌で撫でても開かない唇。
そこまで頑なになられると、こっちだって意地になる。
🌸の意志で開けてほしかったけれど、と柱についていた手で小さい鼻を摘む。押し返そうとする腕ごと抱いて引き寄せると、軽く🌸の踵が浮いたのがわかった。
足元の不安定さと酸素不足で開いた唇を舌でこじ開け、ぐっと食いしばられた歯列をなぞって頬の内側を舐める。
それでも、その先の舌への刺激は許してもらえず、しかたなく離れる。
「っは、そう何回もっ凌辱、されないんだから!」
酸欠で火照った頬と潤んだ瞳。キスで濡れた唇。
こいつ態とか?と眉を顰める。
「おい、人聞きが悪い。バーのキスと昨日のセックスは同意だっただろ」
流れとして誘導したのは認めるが。
「や、そんなあけすけに言わないでっ」
キョロキョロと辺りを見ている。人がいないと気づくと、オープンすぎるよ、と溜息をつかれた。
「今更同意なんか取る必要がある仲か?」
「どんな仲だと思ってるの、」
ああもう、と前髪をかき上げる姿に、そんなの、と呟く。
「恋人じゃないのか」
ぴた、と🌸の手が止まる。
幾度か瞬きをして目線が絡む。
「はい?」
「はぁ?」
何言ってんだ、こいつ?って顔で見てくるから、こっちが何言ってんだ、と言いたくなる。
「ちょっと確認していい?」
「こっちの台詞だ」
「どの時点から?」
困惑した顔で唇に指先を滑らせている。
(どの時点って、)
敢えて言うなら、芍薬からの帰りの車だろうか。
次に目があった🌸のセリフに頭を抱えた。