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依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長

第5章 6年間の始まり01



「未成年です」
早く脈打つ心臓をなんとか落ち着けて、行くよ、と🎀の手を取って歩き出そうとした。

「いや、流石にそれは無理」
「未成年がそんなん持たないって」
ヘラヘラと笑う男二人が行く手を塞ぐ。
彼らが差したのは🌸と🎀が持つバッグ。
心のなかで舌打ちする。
久しぶりの旅行に張り切って、ボーナスで買ったLOEWEと🎀のCELINE。

(あんのバカ研修医)
明らかに未成年が持つには不相応なメーカーのバッグ。
自分のバッグについては棚に上げて、似合うんだから仕方ないだろう、とバカみたいな理由で🎀の持ち物から服まで、それこそ頭の先からつま先まで自分好みにしたがる腐れ縁の変態の頭を心中で叩く。

「旅行者なんです。どうぞお気にならさらず」
「へぇ、どっから来たの?」
「お教えできません」
この類のことに耐性がない親友は、驚きと恐怖をその愛らしい顔に浮かべて俯いている。
自分だって慣れているわけではないし、冷や汗が止まらないけれど、カウンターのクレーマー対応と同じ、と繰り返してやり抜こうとする。

「ちょっと話そうよ。いいお店、知ってるから」
「いえ、お腹は満たされているので」
「じゃあ、バーとかは?カフェでもいいよ」

行こうよ、と伸びた手に、ドク、と大きく脈打つ心臓。

「触らないでっ!」
咄嗟に、手にしていたバッグで男の手を叩いてしまった。
「あ、」
ごめんなさい、と言って身を引くと、叩かれた男の目線が鋭くなって、唇を噛んだ。
勢いづいて手から離れたカバンが、カコン、と落ちる。

「え?舐めてんの?」
「ちょっと顔がいいからって調子に乗んなよ」
(ごめん、🎀、)
咄嗟に🎀を抱きすくめ、目を閉じて顔を反らした。
腕を掴まれた感覚に、ヒュッと息が浅く鳴る。

「おい」
(やだ...)
「やめておけ。怯えてるじゃないか」
少し上から聞こえたバリトンの声に、ゆっくりと目を開ける。

まさか、と思い描いた男とは全く異なる髪色。

深く、鮮やかな赤が風に煽られる。

ふわり、と舞い上がった前髪の奥で瞬いた瞳の鋭さに、寒気のようなものが背筋を伝って、すり寄ってきた🎀の肩をギュッと抱き寄せた。
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