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依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長

第19章 夢のはじまり


見覚えのあるようなないような地下駐車場につくと、彼が操作したスマートキーに反応した車がハザードを光らせる。
彼の髪と同じ赤のSUV。

「どうした?」
車の前で動かなくなった🌸に、助手席の扉を開けたシャンクスが、ほら、と手を伸ばす。
「えっと、後部座席で」
「...コンクリートの駐車場、苦手なんだろうが」
早く乗れ、とつかつか歩み寄ってきて腕を掴む。
「ここに乗ったのが知れたらナイフ持って追い回してくる人とかいないよね?」
「なんの話だ?」
わかってよ、とむくれる🌸が、だから、とまごつく。
言いたいことがわかった、と言うようにため息をついたシャンクスが、軽く車体に寄りかかる。

「あの部屋見て、女がいるように見えるか?」
「愛人かセフレならいそう」
言ってくれるじゃないか、と目を細めるシャンクスを見上げて、じっと見つめる。
「愛人もセフレもいない。
 ああ、まあ、微妙な仲だった女がいた時期はあったが、明確な恋人がいたのなんか...5年?も前だ」
5年前、と呟く🌸。
「なんで別れちゃったの?」
「...すれ違いだ」
早く乗れ、待たせてんだろ?と言われて、そうだった、と助手席に乗り込む。
シートベルト、と言われて装着に手間取っている間にバタン、とドアが閉められて、前方を回る彼をフロントガラス越しに追いかける。

「すれ違いってどんなすれ違い?」

何故か一度、後部座席を開けたかと思うと、サンダルに履き替えて、艶のある靴をポイッと投げ込む。
運転席で手早くシートベルトをかけて、この話続けるのか?と眉を顰めるシャンクスは、私は話したじゃない、と言われて、別に面白くもない話だ、とエンジンをかける。

「学生時代に付き合って、2,3年で別れた。
就職か起業。どっち行くかまだ明確に決めてなくて、向こうは就職してほしかったらしい。
今思えば、将来まで考えてたんだろ。
成功するかわからない起業より手堅い就職、って考えてたんじゃないか」

動き出したタイヤに、膝の上で固く握られた手をこじ開けて指を絡ませると、強く握る。

「彼女も...まあ、それなりのところに就職して、俺は仕事ばかりしてたから、特定の付き合いはしてこなかった」

そっか、とだけ言った🌸の横顔をちらりと見たが、感情の読み取れない表情だった。
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