依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第19章 夢のはじまり
機嫌良さそうに左手でカーキーを弄んでいる横顔を見上げる。
「あの、送るって言っても最寄り駅とかでいいですよ」
そもそもここは地下鉄と直結だからその意味もないけれど、とエレベータの掲示板を見上げる。
ちょうど箱がついて、扉が開いた。
ローから宅配を手配した荷物の送り先が入れ替わってしまっていることを聞いて、慌てた🌸を落ち着け、車を出す、と支度してくれたシャンクスを見上げる。
「どうしてもって言うなら止めやしないが、後悔しても知らんぞ」
扉を手で抑えるシャンクスに、ありがとうございます、と言って乗り込む。
「後悔って?」「ん」
扉の向かいに設置された鏡を指すので、何?と近づく。
「んなぁっ!なにこれ?!」
「気づいてなかったのか?」
バッと両手でスキッパーシャツから覗く首筋を抑える。
耳の下辺りから首筋、鎖骨、果ては肩口、胸元ギリギリのところまで赤紫色の痣がポツポツとできている。
「っつけすぎっ!」
「色が白いとだいぶ目立つな」
何故か満足そうに頷いているシャンクスを、この野郎、と恥ずかしさと怒りで泣きたくなるのを我慢して睨み上げる。
(あれ?そういえば)
たしか自分も、と彼を見た。
足元は焦げ茶のウィングチップにテーパードパンツ。上にニットを着込んだ開襟シャツから覗く首筋はきれいなものだった。彼の付けた跡だけが残ったようだ。
「休日のデイタイムでそれなりに混む公共機関で帰りたいって言うなら、目の前のバス停か直結の駅まで見送ってやるが」
そう言いながら、にやにやとカーキーを揺らす。
「えっち!変態!」
「人様のベッドをびっしょびしょにしたやつが言うか」
なんてことを!と涙目で睨みあげてくる🌸の腰を引き寄せる。
「さっきから敬語に戻ってるな。ちゅーするぞ」
ちなみに24時間監視な、と角に設置された防犯カメラを指差す。
「そ、れは、ベッドでの話、」
「なんだ、🌸にはそういう趣味があるのか」
覚えておこう、と首に顔を埋めるシャンクスの額に手をかけ、違う!と強く否定して押し返す。
「ベッドだろうがなんだろうが約束だ。敬語は無し。さん付けもな」
「あ、うん。わかった、よ?」
「疑問形もなし」
「厳しいよぅ」
「🌸」
なに?と見上げた瞳が優しく微笑んでいることに見とれて力が抜けた手を取られ、温かい体温で唇が塞がれた。