依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第17章 臨機応変に柔軟に03 ❦
あまり見慣れない、車窓からの景色を見るでもなく眺める。
繋がれたままの手をギュッと握られ、隣に目線を向けると、真っ直ぐに前を見て、器用に片手でハンドルを操作する横顔。
開放してもらえる様子のない左手。それがまるで、「逃さない」と言われているようで少し指先が震える。
色々混じってぐちゃぐちゃの頭の中にキツく目を閉じると、🌸、と隣から優しい声が届く。
信号に停まった状態で、スッと離れた手に名残惜しさを覚えて目で追うと、前を見据えたまま優しく笑ってポンポン、と2回、頭を撫でられた。
それからなにか言うわけでもなく、ぎこちない動きで頭を撫でたり、髪を撫でたりする。
今は、あまり表情の読めない横顔を眺めていると信号が変わって、車が走り出す。
静かな車内で、2回ほどどちらかの携帯が鳴ったけれど、二人とも確認することはなかった。
しばらく走ると、食事の前に寄った場所に戻ってきた。
数時間前に使ったロードパーキングを素通りし、建物の横に回る。
コンクリートの駐車場に入ると、タイヤが擦る独特の音がして、🌸はビクッと肩を揺らした。強く握り返される手に、ほう、と息を吐く。
ある程度埋まっている駐車場の端。
すぐ後ろに「関係者通用口」と書かれた扉の前の区画に車を入れて、エンジンを止める。
「タイヤの摩擦音、苦手か?」
ハンドルに腕を掛け、軽く上体を預けるようにしてこちらを見ているシャンクスに、ちょっと、と🌸は頷く。
シートベルトを外して、指先で🌸の頬を撫でる。
「🌸、」と呼ぶと、座席の背もたれに手をかけ、薄く開いた唇にキスをする。
慰めるように柔く唇を食む。
「ん、」
微かに漏れた声に、無遠慮に舌を差し込んで狭い口内を舐め回すと、微かに柑橘の味がする。
驚いて引っ込んだ舌を吸い出して薄目に確認すると、きつく閉じられた瞼がかすかに震えている。
タイヤの音に怯えていた姿に欲情した、なんて言えない。
絡め取っていた舌を開放してやると、ふぁ、と🌸の声とともに吐息が濡れた唇にかかって擽ったかった。