依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第15章 臨機応変に柔軟に01
空港に降り立ち、パーキングに停めた車に向かうため、自動扉を出ると少し冷たい空気が頬を刺した。
着替える暇がなく、スーツと革靴のままに出張の荷物を持っているのでだるい。
パーキングについて荷物を積み込んで、胸ポケットにネクタイが入ったままのジャケットと運転しにくい革靴を脱ぎ、車に乗せっぱなしのサンダルに履き替える。
エンジンがあたたまるのを待つ合間に携帯を取り出す。
旅行から帰ったら連絡がほしいと伝えたあと、返信がない。
時計を見ると20時を回ったところで、もうこちらにはついているだろう。
もしかしたら、自宅に帰っているところかもしれない。
バカンスに疲れて、ゆっくりと休みたいだろう。
自分も、慣れない土地への出張帰りはやっぱり疲れる。
でも、できたら会いたい。
自分を落ち着ける理由と滾る欲をぐちゃぐちゃに混ぜながら、携帯をダッシュボードに置く。
帰ろう、とギアをドライブにチェンジしてサイドブレーキを解除したところでメッセージの受信音が鳴り、慌ててパーキングに戻す。
-今、友人と空港で別れたところです-
空港で別れた。
ならば、🌸は一人だろうか。
また、ぶわりと巡る熱で熱くなった指先で画面を叩いて、彼女を引き止める言葉を送ると、車を到着ゲートまで走らせる。
同じタイミングで、数台、到着ゲートの車寄せに車が入っていく。
さっきよりも人の落ち着いた通路に目を向けると、すぐにわかった。
スキッパーシャツにハイウエストのスキニージーンズ。
オペラシューズとショルダーのスタイルは、バーのときと同じ。通路の脇で、携帯の画面を凝視している。
ほとんどの車がはけて、タクシーが一台残るだけになった後ろに車をつけ、サンダルに履き替えたのも忘れて車から降りると🌸、と名前を呼んで、駆け寄りたいのをぐっとこらえて、ゆっくりと歩みを進めた。