依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第11章 燻りだしたのはなんだ
なんの貸し?と眉を顰める🌸に、まあ気にするな、とキスのことなのか貸しのことなのかわからないことを言って、彼は残りのウイスキーを飲み干した。
帰りも、部屋の前までエスコートしてくれたシャンクスは、扉の前で向き合った🌸の目尻に、おやすみ、と小さくキスをして扉が閉まるまで笑顔で送ってくれた。
扉が閉まる間際、ひらひらと振られた彼の左手につられて上げた自分の右手が、だらりと落ち、ぺたりと座り込んだ。
「〜~っ!」
叫びそうになった口を、🎀が寝ていることを思い出して、強く覆う。
(貸しって、貸しって何...)
出逢って即、ではないけれど、半日足らずの男とキスしてしまった。
(しかも結構、濃密に)
すっかりリップの取れてしまった唇がまだ熱い。背に触れていた大きな手の感触もしっかりと残っている。とにかく何かのせいにしたくて、お酒のせい、彼の雰囲気のせいと思いつくだけ思い浮かべる。
一通り思いつくだけ思いついて、はぁ、と天井のライトを見上げた。
「シャワー浴びて寝よ」
明日、🎀と遊びまくって忘れよう。
そうだ、こっちにしかない初上陸のお店に行きたいって話していたんだった。
モーニングが名物で、そのためにわざわざホテルのモーニングはキャンセルしてもらったのだ。
すっかり体力消耗している。
明朝は空腹だろう。朝からやけ食いだ。
「体力というよりは精神力消耗してる気もするけど」
よっこいしょ、と立ち上がって、シャワールームに向かう。
ゆるく髪をまとめて、ぁあー、と変な声を出しながらちょっと温めのシャワーを頭から浴びる。
(なにやってんだろ)
助けられて、お酒飲んで。
アルコールが入ってあんなことして、と思い出してカッと目を開く。
(え、むしろなんでキスで終わったの?)
それに気づくと、意味がわからなくて唸る。
(欲求不満でキスがしたかっただけ?
え、むしろキスでなにかに幻滅された?
だから、助かったのか...?
いや!抱かれたかったみたいじゃん)
何考えてんだ、自分!と眼の前の壁に、ごちん、と額を当てる。
いつまでもドキドキとうるさかった心臓は、シャワールームを出る頃には落ち着いていたけど、ジリジリと焼け付くように唇と耳には、眠りにつくまで熱が宿っていた。