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依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長

第10章 酔いが回る


悪いな、と戻ってきたシャンクスが椅子にかけたところを見計らって、前を開けて着ているジャケットのボタンがついている方の前身ごろを掴む。捲ったその裏側。捩じ込もうと左手に小さく畳んで隠していた数枚の紙幣を、そこの内ポケットに入れ込む。
「あっ」
奥まで押し込もうとしたのが仇になった。手が離れる前に手首を大きな手に掴まれて、キッと睨みあげる。
咄嗟に掴まれていない方の手に持ち替えて、再びそこに向かって手を伸ばすが、ガタリと立ち上がった彼にその腕も掴まれて、バランスを崩され、ハイチェアに戻る。

「随分、大胆だな」
🌸の膝を跨ぐように立ち、楽しそうに笑うシャンクスに見下される。
「お支払します!」「結構だ」
「部屋づけなんてずるい!」
カフェの分だって、と押し返そうと腕に力を込めている🌸を見下ろし、理由があればいいか、と問う。

「いい時間を過ごさせてもらった」
「そんなの、理由にならない」
「十分だろう?」
「だって、私だって楽しかった」
楽しんだ代償ならばフェアじゃない、という🌸にシャンクスの脳裏には悪どい考えが浮かぶ。

「何か、代償を貰えばいいのか」
「だから、お金払うって言ってるの」
これ!と手中の紙幣を目線で指す🌸の両手をパッと離し、低い背もたれを掴んでぐるりと向きを変える。
他の客の座る席と、カウンター内のバーテンに背を向けるような位置に固定し、楽しかった、と言った唇にまだウイスキーの香りが残る自分のそれを重ねた。
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