依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第58章 新しい道へ
✜
端が欠けたコンパクトに、はっと息を飲む。
CHANELのロゴがあるそれは、当時、彼女が愛用していたものと同じ。
ありがとうございました、と🌸にお礼を告げ、向こうですかね?と式場に向かうラリア。
「なんか、ロシさんみたいな人」
ドジっ子?と振り返った🌸。
「シャン?」
表情無く、式場の奥を見るシャンクスの目の前で手を振る。
「シャーン?」
その手首を掴んだ手に驚く。
シャン?と再び問い掛けかけて、慌てる。
だらり、と額から垂れる汗。
青褪めた顔と震えている唇に、俯く頬を上げさせる。
「苦しいの?痛いの?」
傷が痛む?と顔の傷に触れた手を強く握られる。
「っかはっ」
がくり、と膝をついてしまった背中を擦る。
厚みのあるジャケット越しでもわかる熱に、大変、と携帯を取り出した。
救急車、と考えて、一瞬手が止まる。
(せっかくの結婚式...)
迷う🌸の手を掴んだのはシャンクスだった。
「だい、じょうぶ、だっ」
だいじょうぶ、と掠れた声で繰り返す彼に首を振る。
「薬はっ?持ってないのっ?」
「だいじょうぶだ、だい、じょうぶ」
大丈夫じゃない、と立ち上がると、式場の職員を捕まえた。
「すいません、少し休める場所はありますか?」
どうされました?と近寄ってきた男性職員は、机に隠れていたシャンクスの様子に慌てることなく、インカムで人を呼んだ。
「うっぐ」
「吐きそう?」
傍らに屈もうとした🌸に、来るな、というように手を翳して、首を横に振る。
数人の職員が来て、担架か車椅子、と話していると、蹲っていたシャンクスが、跳ね立って、ダッ!と駆け出した。
「シャンっ!」
走りづらそうにしながらも廊下を駆け抜けるシャンクスに、固まる職員たち。
「すみません、あと、おまかせしてよろしいですか?」
わかりました、という職員にお礼を言って彼を追いかける。
「あ、🌸さーん。式、始まります」
よ?とすれ違ったシャチとペンギンとベポは、走り抜ける赤髪を追いかける🌸に驚く。
「🌸さんっ!?」
「先に行ってて!すぐ行く!」
アイアイ!と反射的に敬礼した3人は、なんだ?と見えなくなった二人に、顔を見合わせて首を傾げた。