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依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長

第10章 酔いが回る


約束を取り付けると、タクシーを捕まえてホテルに戻る。
上層階に取った部屋に入ると、靴を蹴り脱ぎ、スーツをハンガーにかけると、カウチに、カバンとネクタイとワイシャツを放る。
短時間でシャワールームから出ると、リネンシャツとパンツを身につける。備え付けの冷蔵庫からミネラルウォーターのボトルを取り出して、1/3ほど飲む。生乾きだった髪を乾かし、整髪料で整えるか悩んで、手ぐしで整えるだけして残りの少ない香水を手に取る。

ルームキーと貴重品だけ手に取ると、少し早足に地下へと向かった。
もう少し話してみたかった、とバーの入り口で落ち合ったジウに少し笑みを濃くし、エスコートする。
少し高めのハイチェアは、装いを変えたジウには少し座りづらそうで支えてやると、ありがとうございます、と自然な色で艶めく唇が紡ぐ。
彼女もシャワーを浴びたのだろう。しっとりと降ろされた髪から柔らかな甘い香りがする。ホテルの備え付けのものを使ったら自分と同じ香りだろうが、はちみつを思わせるような香りなので、自前のものだろうか。

横並びに座ると感じた、藤の花の香り。
酒の好みを聞いてオーダーしたダージリンクーラーは、お気に召したようだった。
少し、自身の生活について話しているとじっと見つめられている。昼のカフェの時とは逆だな、と見つめ返し、ずっと触れたいと思っていた艶のある髪に手を伸ばす。
耳に髪をかけるようにすると、少し冷えた耳の縁に触れた。少し肩が跳ね、小さく声を出したジウに気を良くして、指通りのいい髪を楽しむ。
今は染めていないという髪を弄び、合間に見える柔らかそうな耳朶を指先を伸ばすと、ジウは過敏に肩を揺らした。
その様子に笑みを濃くして、ほんの少しの力で耳朶に触れる。

ゾク、とする声で椅子から落ちそうになったジウが、ぎゅっと腕を掴む。
大丈夫か?となんでもないように言ってみたが、自身の鼓動はうるさいし、見上げてくるジウの目にも香りにも、触れている体にも俯いて謝る声にもドキドキさせられる。酒には強くないと言っていた。確かに、まだ1、2口しか飲んでいないのにジウの身体は熱いし、瞳も潤んでいる。

お互いに呼吸以外を忘れて見つめ合い、カラン、と鳴ったダージリンクーラーのグラスの音に、支えていた腕に少し、力を込めた。
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