依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第57章 オーロジャクソンハウス
「婆さん、生きてたのかっ!?」
「失礼な男だねっまだピチピチの92歳だよ!そのツラじゃなきゃ叩き出してやるよっ」
威勢のいい返しにシャンクスがケタケタと笑う。
「とっくにくたばったと思ってたよ!オリ婆」
「ううーん?...うんっ?!お前さん、ロジャーさんところの『赤太郎』かい?」
そうだよ、と笑うシャンクスにぴょん、と文台から降りてくる。
「懐かしいねぇ。とんと見なくなっちまって...」
「まだこの店があったことに驚いてるよ」
奥の小上がりに腰掛け、店内を眺めるシャンクス。
「けど、子どもたちも減ったよ。最近じゃあ、ウタとルフィくらいさ、常連も」
「俺たちがガキの頃は、店先に自転車が積むくらい並んでたからなぁ」
そうそう、と頷いて目を細める。
二人のやり取りを少し離れた所から見ていた🌸に気付く。
「お前さんは...」
「なにか?」
首を傾げる🌸。
「ああ、いや。なんでもないよ。ちょっと、思い出してね」
嫌だねえ、年を取ると若い子がみんな同じに見えちまって、とまた文台につく。
「ねえ、シャンクス。奢ってぇ」
甘えた声でお菓子を詰め込んだかごを揺らすウタ。
「お前、どこでそんなこと覚えてくるんだ」
呆れ声を出しながらもコインケースを出してやるシャンクスに、まだ選ぶから!とストップをかける。
「食い切ってない分もあるからな。買いすぎるなよ」
「シャンクス...ああ、そうそう。バギーという子とよく来てたね。思い出した」
「釣り箱」と書かれたキーボックスを開け、やれやれ、と溜息をつく。
「子どもたちや近所の人は毎日見るからね。
そうだねぇ、3ヶ月も顔を見ないと、名前が出てこなくてねぇ...年は取りたくないもんだよ」
皺の目立つ指先で、釣り銭を数える。
「立派になったもんだねぇ。いくつになった?」
「30」
なんだ、まだそんなもんかい、と笑う。
「レイリーは生きてるのかい?全く、あの男は。耳障りのいい言葉だけ残していなくなっちまって...」
「あっはっはっ!元気だよ、相変わらず」
生きてるならいいさ、と小銭を整理する。
「こうやって懐かしく話せる奴らも、減ってきちまったねぇ」
少し悲しげな声に、そうだな、と答えたシャンクス。
楽しそうにお菓子を選ぶ二人の姿だけが、セピアの中で鮮やかに見えた。