依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第57章 オーロジャクソンハウス
壁の写真に向き直り、重ねられた写真をずらす。
(あ、)
ぱっと、また、角と角を重ね戻した。
(見ちゃった)
見なきゃいいのに、と数秒前の自分に溜息をつく。
目に焼き付いたその下の写真を壁に投影する。
カウンターのハイチェアに腰掛け、煙草とウイスキーグラスを手にしたシャンクスに抱きつき、ピトリと頬をつけて笑っていた女性。
嫌がる様子もなく、嬉しそうな笑顔の彼が右手でしっかりとその腰を支えていた。
酔った勢いで、と言うには距離の近さと互いの姿勢が慣れているように見えた。
そして、その彼女には少し、見覚えがある。
(シャンの、卒業写真)
以前に、ヤソップが持ち込んだアルバムに紛れ込んでいた彼の学生時代の写真。
シャンクスの手によって裂かれ、🌸の手によって修復された写真に映っていた彼女と、彼に腰を抱かれていた彼女は十中八九、同一人物。
もう一度、写真を覗くように見ると、撮影日は7年前。
シャンクスが22,23の頃だ。
(この人が、『最後の恋人』だった人...?)
以前にヤソップが持ち込んだアルバム以外の写真は見たことがない。数枚、書斎のデスクに写真は飾られているが、そこにはロジャーやレイリー、ウタやルフィが一緒に写っているものばかり。
写真に、サインが入っていた。
Shanksの後に続く名前との間にハートマーク。
(aaa、さん)
「🌸さんっ!」
ハッ、として振り向くと、鍔広の帽子を被ったマキノ。
「フーシャ公園に行くなら、あそこ、日陰が無いから」
帽子、持ってないでしょう?と差し出された色違いの帽子。
「ごめん!わざわざっ」
「私ので申し訳ないけど...あ、写真?」
たくさんあるでしょう、と微笑む。
「いつからか、この壁は写真のスペースになってて...昔のものは少し整理しながら、色んな思い出を貼ってるの」
ウタちゃんの発表会の写真貼らなきゃ、と見渡し、そうだ!と手を打つ。
「帰る前に、みんなで写真を撮らない?できれば飾りたいな」
「そ、うだね」
早く〜!と呼ぶウタとルフィの声に、はーい、と返事をしたマキノを追って写真から離れるが、気持ちはずっと、重ねられた写真に向いていた。
(気にするタイプじゃないと思ってたんだけどな、)
どんどん色濃く脳裏に残る名前や姿に、ゆっくりと瞬きをした。