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依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長

第56章 Hope


「半島になっていて、あの灯台挟んでちょうどハウスと逆位置にあるんだ」
あれ、と広い窓ガラスを指差す。歩み寄ると、少し遠くに灯台の光が見えた。

「今走ってきた道が、海沿いをぐるっと半周する道。広い道をあのまままっすぐに行くと、ハウスに向かうときに少し通った大きな道に出て、学校や役所がある」
ちょっと回り道してきた、と背中にピタリとついた熱。
ガラスをなぞった手がするりと降りて腰の辺りで組まれる。
その手に自分の手を重ね、少し見上げる。

「明るい時に通ると、また景色が違う?」
「そうだな。夕日の時が一番綺麗に見える」
そっか、と見下ろすブルー・グレイと視線が交わる。

「今日は、無理させて悪かったな」
疲れてないか?と額に、一つキスが落ちてくる。
「ううん、不思議な日だった」
「不思議な日?」
ソファセットの一つに腰掛けたシャンクスが、おいで、と延ばす腕に収まる。横抱きで膝の上に乗せられると、大きな手が髪を撫でる。

「ウタちゃんのことも、マキノちゃんのことも...信じられなくて、現実なのか未だにふわふわしてて...」
そうか、とまたキスが落とされる。
「ごめんな」
うん?と見上げると、なんとも言えぬ顔で眉尻を下げる。

「ウタのこと、ちゃんと事前に話しておくべきだった」
「その事は、ほんと私の早とちりだったから」
「そうじゃないんだ、その...」
歯切れ悪く、肩に額をつけて溜息をつく。
「ウタの事は、娘だと、思っている」
体に巻きつく腕にそっと手を添える。
「もし、🌸が、いいと言ってくれるなら...この先があるのなら、俺は望む」
そっと離された体。
俯いたまま、🌸の腹の下部あたりに手を添える。
温かな手で、労るようにそこに撫でる。

「いつか、いつかでいいんだ。🌸が、俺が、いろんなものを手放せた時、片付けられた時」
見下ろしていた腹部から、真横の顔に目線をずらす。
さら、と落ちた髪を耳にかけた手が、頬に添えられた。

「子どもが、ほしい。家族を増やしたい。二人で」

大きな手に重ねる手。
「🌸」
両頬を包む手の温かさに目を閉じると、重なる唇。
「俺と、結婚してくれないか」
閉じた瞳から流れた一筋が、頬を包む少しカサついた指先に染み込んでいった。
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