依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第55章 思わぬ再会
抱きつくウタを支え、聞こえた声に顔を上げる。
「お帰り、ウタちゃん」
ロングスカートにエプロンとバンダナをしているのは深い緑の髪の女性。
こんばんは、と声を掛けると、こんばんは、と返される。
「ただいま、マキノさん」
ウタの言葉に、おかえり、と言いつつ目線が外されない。
「やあ、マキノさん。いつも世話になる」
「いいえ、ウタちゃんを送ってもらってありがとうございます」
シャンクスに礼を言うと、あの、と再び凝視される。
スッと寄り添った体温に顔をあげると、軽く抱かれる腰。
「紹介する、俺の婚約者だ。🌸、彼女がマキノさん。ここの世話役の職員だ」
はじめまして、と軽く会釈する。
「今日一日、ウタの相手をしてくれた」
「そうだったんですか...」
「なあ、『コンヤクシャ』ってなんだ?」
足元で問うルフィに、ウタが得意げに答える。
「結婚を約束した人のことよ!」
「『ケッコン』ってなんだ?」「ええっ?!」
じっと向けられるマキノの目線。
悩む仕草を見せて、口を開く。
「もし、違ったら、ごめんなさい」
少し戸惑うような顔で見つめられる。
「『クジラの家』」
マキノの言葉にハッ、と🌸が手で口元を覆った。
その仕草を見たマキノが、嘘、と同じようにして目を潤ませる。🌸さんっ、と伸ばされる手を掴む。
「『マキノ』って...」「そうっ!わ、私っマキノよ!」
バンダナを外し、涙が浮かぶ瞳を細める。
「🌸さっん、」
うわーん!と抱きつく体の背に手を回す。
「本当に、本当にマキノちゃん?」
うんうんっ!と肩口で頷く。
「🌸さん、と、突然いなくなっちゃって...ご両親のもとに戻ってすぐ、私も養父に引き取られて施設から出たから、手紙も書けなくてっ」
ハラハラと涙を流して早口になるマキノ。口元を覆ったまま、何度も頷く🌸の目からも、涙が一筋落ちた。
「ど、とうしたっ?なんで泣くんだ?」
腹でも痛いのかっ?と慌てるルフィと、どうしたの?と戸惑うウタは、柱に寄りかかるシャンクスを見上げた。
微笑んでしゃがみ込んだシャンクスは、口元に人差し指を立てて、シー、と「ケッコン」が何かについて語り合った二人の頭を撫でた。