依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第54章 小さな訪問者
シャンクスに泣きついている女の子。
どうやら、彼女の発表会に行く予定だったシャンクスが来なかったので、機嫌を損ねているらしい。
悪かった、と謝る彼に、許さない、と抱きついている。
(親子に見えるよなぁ、)
慰めて許しをこう彼は父親のような目をしているし、約束を模糊にされたことを攻める彼女は、まるで父親に我儘を言う娘のようだ。
徐ろに彼女を抱き上げ、子供を寝かしつけるようにあやしている。
(ちょっと、意外)
キッチンで購入品を整理しながら、小さな女の子の機嫌を取ろうと、四苦八苦している様子を盗み見て隠れ笑う。
二人の話し声がやんでいて、ふと顔を上げる。
じっ、とこちらを見つめるだけの二人。
優しい眼差しの彼と、少し戸惑いの見える彼女に微笑みかける。
「っはわっ!」
プイッと顔を反らしてしまった彼女に、なにか悪いことをしただろうか、と慌てる。
ははっ、と笑って彼女を抱いたまま歩み寄るシャンクス。
「はじめまして、🌸です」
彼が紹介してくれた彼女は、少し上げた目線で確認すると、微かな声で「ウタ、だよ」と言って、ぅぅん!と俯いてしまう。
「気を悪くしないでくれ。ウタは、気は強いんだがちょっと人見知りが激しくてな」
「ううん。可愛い子だね」
可愛いってだぞ?とシャンクスに顔を覗き込まれて、少しだけ顔がこちらを向く。
「ウタちゃんって、呼んでもいいですか?」
仕事で子供と接するときと同じ口調で話しかける。
また少しだけ顔を上げ、片目だけ向けると、うん、と頷く。
(めっちゃかわいい!)
にやけそうになる顔を反らして悶える🌸。
降りる、とシャンクスの腕から滑るように降りたウタは、少し背伸びをして、カウンターを覗く。
「なにしてるの?」
「ん?お買い物してきたものを片付けてます」
「何買ったの?」
「ご飯の材料だよ。あ、ウタちゃん、発表会だったんだよね?お腹空いてる?」
ご飯食べちゃった?と食品用の棚を開ける。
「まだ、食べてない」
「よかったらシャンクスさんと一緒に食べてくれる?」
パァッと明るくなる顔が。食べるっ!と頷くウタに、かわいいなぁ、と🌸はキュンキュンしながら調理を始めた。