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依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長

第54章 小さな訪問者


部屋に入ると、散々彼を罵倒して泣き喚いた後、少し落ち着いた様子ですすり泣くウタの背中を撫でて、シャンクスはリビングのソファに腰掛ける。
ソファの裏に置かれたレッスンバッグからは、楽譜帳が覗いている。

「発表会、今日だったんだなぁ...悪かった」
「うっグズッ、ゆるざない」
弱ったな、と頬を搔いてシャンクスはウタの頭を撫でる。
「なんの発表したんだ?歌か?楽器か?」
音楽に関する発表会だったらしい、と出る幕がないと判断した🌸は食事の支度に取り掛かる。
「ズルッ、シャンクスに、連絡した...返信、くれなかった」
ぅえ⁉と慌てて携帯を取り出すシャンクス。

確認して、うっ、と声を漏らす。
どうやら見落としていたようだ。

「ずっと、ずっと待っでだのにっ...ジャングズ、ぐると思っだから、マぎノざんのお迎えっヒック、いらないって...ゔぅ〜」
いつまで経っても来てくれない、返事もくれないシャンクスに業を煮やしてこうして家まで来たという次第らしい。

「エレジアホールから電車乗ってきたのか?」
コクッ、と上下する頭。
「T.O.Gの場所、よく覚えてたな」
「...スマホで調べた」
ニョキ、と出された画面には地図アプリ。
『シャンクス♡』と書かれた吹き出しが、チカチカと現在地を示している。

「悪かった」「許さない」
許されないかぁ、と、膝の上に乗って抱きつくウタを支えて立ち上がると、よっ、と抱き直して身体を揺らす。
「この前の髪飾りじゃだめか?」「だめ」
うーん、と悩んでベランダの方へ歩くと、ガラス越しの景色を見せてやり、あっちに空港があって、と指を指しながら話しかけてやる。

いつの間にか止まった涙を拭い、うん、うん、頷くウタの意識がうまくそれたことにホッとした顔のシャンクス。

「ね、シャンクス、」「ん?」
肩に捕まりながら、じっと目線を奥にやるウタ。
キッチンにいた🌸は、二人分の視線に気づき、目線を上げて首を傾げた。
「っはわっ!」
🌸に少し微笑みかけられたウタは、あわててシャンクスに抱きつき、肩口に額を擦り付けた。
極度の人見知りのウタを抱いたまま、キッチンカウンターの向かいに行く。

「🌸、ウタだ」
ポンポン、と背を叩き、挨拶しろ、と促すシャンクスに、ウタはチラリ、と顔を上げた。
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