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依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長

第54章 小さな訪問者


野菜や果物が並ぶコーナー。
(やっぱり、気持ち高いな)
同じ系列店だが、立地によるものだろうか。
赤と黄の立派なパプリカを手に取る。
(半分サラダにして半分ピクルスにしよ)
プチトマトときゅうりも、と売り場を見渡すと、商品の陳列をしていた店員と目が合う。
いらっしゃいませ、と言って逸された目線。ちら、と横目に向ける先を見る。

「ん?」
片手に買い物かご、片手で🌸と手を繋ぐシャンクスが、どうした?と目線を下ろす。

「ううん、」「?あ、牛乳買っていいか?」
うん、と乳製品が並ぶ冷蔵棚へ。
成分表示に「牛乳」と書かれたパックを取る。
同じ並びにたくさんの種類が並ぶチーズ。ピクルスに入れる一口サイズのモッツァレラチーズをカゴに入れる。


一通り買い物をしてレジに通す。
以前、シャンクスに袋詰めをやらせてみたらバランスを考えずに詰めるのでそれ以来、袋詰めは絶対にさせない。
卵を買ったので、彼にやらせるなんて言語両断である。

空になったかごをストッカーに入れ、袋を持ち上げる手。

「🌸」
差し出される手を取ると、機嫌良さそうに綻ぶ顔。
指を絡めて強く、柔く握られた手を引かれて店を出る。

片手が空く🌸がエントランスへのカードキーを翳そうとした時だった。
「シャンクス!」
女の声。いや、正しくは女の子の声。
「ぅおっとと」
膝下辺りから勢いよく飛びつかれた彼は、少しバランスを崩して足を踏み込んで耐えた。
ぱちくりと驚く二人が下ろす2色の髪が上を向く。

「う、ウタ?お前、何してる?」
シャンクスの言葉に、🌸はハッとする。
そう、この子だ。彼を既婚者かもしれないと勘違いした時に抱きあげられていた子。

しがみついていた彼の脚から離れると、恨めしそうに睨み上げるヴァイオレットの瞳。
クリームカラーのブラウスに赤のリボン。イエローのキュロットパンツに茶色のローファー。
その顔は今にも泣き出しそうで、下唇を噛んで見上げている。
かわいい、と見惚れている🌸に目もくれず、シャンクスに噛みつく。

「今日の発表会、どうして来なかったの⁉」
「発表会??」
心当たりの無さそうな彼に、ワナワナと震えだす。
女の子の目は堰を切ったように涙を溢れさせ、ジャングズのバカー!!というよく通る声が響き渡った。
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