依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第53章 彼女の真実
グスッ、と鼻をすする。
「キッド君は、結構喧嘩とかしちゃう子で...ローともしょっちゅう取っ組み合いしてて...」
男ならそういう時期もある、とシャンクスは学生時代の自分に心当たりがあった。
「キッドくんの喧嘩は、『容赦がない』って有名で...彼は傷1つ作ったところ見たことなかったのに、あの日は、顔も体も傷だらけで、腕は折ったのか吊っていて...。学校も一ヶ月以上休んでた」
🌸が目を伏せ、息を吐く。
「それから、彼とは話さなくなって、私は卒業したの。その後、当時の同級生にあの怪我が私のせいだって聞いて」
「なんで、」
顔を顰めたシャンクス。
「学校内の、権力争いっていうか、最高学年になるにあたって、誰が指揮を取るか、みたいな事が男の子たちの中にはあったみたいで...それに彼も参加してて、最後は当時の3年と決闘して勝ったら代譲りっていう風習?があったんだって」
自分達の時代にも似たような事があったな、と10年以上前の古い記憶が蘇る。特に興味もなかったが、何かしら巻き込まれてはいた。
おかげさまで、今でも少年課の警察に顔見知りが多い。
「抵抗するなって言われて、大人数に一斉に...」
(リンチか)
ガードも許されない上に多勢に無勢が基本なので、乱闘とは痛みが桁違いなんだよな、と、ほぼほぼ近い状況で受けた顔の傷が痛んだ気がして、顔を歪める。
「それに、キッド君が従った理由が、私、で...」
だろうな、とローと🎀から聞いていた話と掛け合わせて理解する。
一人の少女に向けた好意が弱みとなり、いつもは作らない傷を作った男。
その原因が自分に向けられた好意だと知った時の彼女の心境を思うと、いたたまれない。
悔いても意味のないことだとわかっている。
場所も、時も違う。
それでも、彼女を守ってやりたかった、と握っていた手を引き寄せる。
抵抗しない体を抱き寄せ、そうっと、腕を回す。
「怖いか?」
自分でも驚くほど、恐恐と🌸の髪を撫でる。
「ううん」
ゆるゆると頭を振り、少し体を預けた🌸。
遠慮は見えるが、怯えてはいない表情に、ほっとする。