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依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長

第9章 狩人の試行錯誤02


未来の花嫁様が席を立ったことで、二人で向き合っていた。
少しの沈黙のあと、紅茶の入ったカップから目線を上げた彼女。髪を耳にかける仕草を見つめていた。

「シャンクス、さんは地元の方ですか?」
男たちに食ってかかった時とはまるで違う、心地の良い柔らかな声。
「いいや。」
彼女がもう少しその声でなにか紡いでくれないか、と短く答える。仕事なのか?と問われて肯定する。
「そっちは、OLか?」
「公務員をしています」
モビー・ディック市で、と聞き、目を瞬く。自社が隣市にあることを話すと、奇遇だ、と柔らかく笑った。
(所属まで聞き出すのは怪しいか)
公共施設の総務にいるという彼女。
場所まで聞き出して会いに行くのはさすがに怪しい、と自覚する。

(この年になって一目惚れ、とは)
しかも年下の女に、と自分に呆れつつ、ごまかしに口をつけようとしたカップはすでに空になっていて、手中でカップを弄ぶ。
まだ緊張があるのか、彼女は手元のカップやテーブルで視線が揺れている。

(さて、どう切り込むか)
せめて連絡先だけでも手に入れたい、と思考する。
下手にがっついて引かれては元も子もないし、今のところまだ戻らない彼女ほど警戒心を解いてもいないようだ。
長く見つめていたせいか、ふっと目線を逸らされた。
(こっちを見ろ)
その瞳に住みたい、と切望に近い想いを静かに視線に乗せると、マグカップに向いていた視線がこちらを見た。
再び絡んだ視線に、言い得ぬ満足感で緩む口角を隠すため頬杖をつく。

「そ、んなに見られると、困るんですが...」
紅茶を一口飲んで見上げてきた瞳が、ひどく潤んで見えた。
跳ね上がる鼓動を隠したくて、姿勢を変えて不躾を詫びる。

まだ帰りそうにない友人に、今のうちにもう少し踏み込んでみようか、と彼女の恋愛事情を探ってみた。
恋人はいない、とはっきり聞き、内心でガッツポーズを取るがおくびにも出さない。
2年半前に別れたという男に感謝する。
警察組織の男だと言われのは少し意外だった。
別れた理由を聞くと、そんなに興味があるのか?と訝しがられたが、自然消滅だと言う口ぶりに未練などはないようだ。

(ジウの5つ上。警察組織で葉巻を好む男)
いくらか顔見知りのいるところだが、記憶に中に当てはまる人物はおらず、ぼんやりと、彼女の隣で葉巻を蒸す男の影を写してひとり、機嫌を損ねた。
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