依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第53章 彼女の真実
「はい、はい...いえ、ありません。はい、」
ベッドの上で、すいません、と電話を耳に当てて謝る🌸。
「午後から登庁します、」
隣でそれを聞いたシャンクスが、スマホを抜き取った。
「🌸の身内の者ですが」
仕事の時と同じ口調で変わると、あら?と落ち着いた女性の声。
ちょっと!と手を伸ばす🌸から離れる。
「病院に連れて行くので、一日の休みをお願いします」
返してっ、とベッドから降りようとするのを、片腕で抑える。
-えっと...ああ、煙草の彼さん?-
「え?」
落ち着いた、色気を感じる声。
-いえ、以前、彼女から煙草の香りがしたから...
一日、お休みということでよろしいですか?-
同僚か上司か。どこか嬉しそうな声に、お願いします、と電話を切った。
返したスマホをぱっと取り上げ、睨みつけてくる🌸。
「なんで勝手に出て切るの?」
少し見下ろして腕を組む。
「『午後から行く』なんて言うからだ」
「行けるかもしれないでしょ」
「行けるわけ無いだろう!」
ガッ、と腕を掴むと、🌸の手から落ちたスマホが床を滑る。
「倒れたのが会社の前じゃなかったらどうなっていた?路上で一人倒れてみろっ、頭でも打ってみろっ!」
両腕を抑え、正面から迫る。
「ビルの目の前だったこと、アメリがお前を知っていたこと、俺と連絡を取れたこと、ホンゴウがいたこと。一つでも違ってみろ。死んでてもおかしくないんだぞっ!」
ビクッと震え、それは、と目を逸らす🌸。
「お前は、心配もさせてくれないのか」
椅子に座り込むと、頭を抱えるシャンクス。
「甘えてくれよ」
クシャ、と布団を握り込む手に触れると、パシッ、と強く握られる。
「俺じゃ、頼りないか?」
複雑に歪んで、無理に笑う顔に、ツン、と鼻の奥が痛む。
「俺は、どうやって🌸を守ればいい?」
俯いて、深く吐き出された息。
「俺は、なんのためにいる?」
震えている声が、静かに溶けていく。
「教えてくれ」
時報の音が鳴ると、鍵を開ける音のあとにシャッとカーテンが開く。
「あ、やっぱりいた」
🌸に気づいて、おはようございます!と笑う彼に、おはようございます、と小さく頭を下げた。
「どうも!ホンゴウです。医者です」
そう言って、床に落ちた携帯を差し出した。