依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第52章 ふるえるココロ
扉が開ききらない内にぬ、と伸びてきた手にガシッと襟首を掴まれる。
それに驚く間もなく、ガクガクと揺すられる身体。
入室者の手からジャケットが落ちる。
上がっている息で、無理くり紡がれる言葉。
「🌸はっ?🌸はどこだっ!?」
ようやく聞き取れた言葉に、奥に、と指差すと、放り捨てるように開放され、ゲホ、と噎せこんだ。
そう広くもない医務室に駆け込んで、アメリが付きそうベッドの傍らに膝をついた。
「🌸!」
毛布の中の手を取り、🌸...🌸、と繰り返して頬を撫でる。
散々ゆすられたホンゴウが、入り口に放置されたジャケットを掴み上げて溜息をつく。
声をかけ続ける彼は、走ってきたのか、汗をかいて革靴は汚れて傷がついている。
ネクタイが緩んでクシャクシャのシャツの背中には汗の跡。
額から滲んだ汗が、伝う。
手を握り、頬に触れて確認すると、少し気を取り直して息を整えているシャンクス。🌸の髪に触れて、ジャケットを受け取ると、何があった?と険しい顔。
「あの、」
おず、と声をかけたアメリ。
シャンクスは、たった今その存在に気づいたように、彼女の名前を呼んだ。
「アメリ、」
「えっと、会社の前で鉢合わせにぶつかっちゃって...男の人が追いかけてきたんですけど、困ってるようだったんで割り入ったら、彼女さんは体調悪そうで...」
男?と鋭くなった眼光に、メモの情報提供書を差し出す。
「警察呼ぶって言ったら、彼女さんに謝って立ち去りました」
イラストの似顔絵を睨み、ふぅっ、と少し早い息を吐くシャンクス。
「ありがとう。助かった」
唐突に頭を下げたシャンクスに、アメリは慌てて、やめてください!と身を引いて手を振った。
「どちらかって言うと、私がしゃしゃり出ちゃったわけでっ!あの、本当にやめてください。頭上げてくださいっ」
頭、とホンゴウに声をかけられ、シャンクスはようやく頭をあげた。
「見たところ外傷もなく頭も打ってなさそうだが、念のため、病院には連れて行った方がいい」
「...わかった」
今後の注意点を話すホンゴウに真剣に向き合い、握り込む🌸の手を撫でる。
「🌸」
囁いて握った手に額を当てて目を閉じるシャンクス。アメリはホンゴウとアイコンタクトを取り合うと、静かに医務室を出た。