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依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長

第52章 ふるえるココロ


目的階で開いた扉の隙間から這い出るように廊下に出て、医務室までの最短ルートを駆ける。

残る社員もほとんどいない廊下にシャンクスが駆ける足音だけが響く。
首に流れる汗に、走りながらジャケットを脱ぐ。

『医務室』と書かれた扉の前でようやく止まり、ノブを握るが鍵がかかっている。
が、ドアに埋め込まれた細いすりガラスからは光が漏れており、力任せにノックする。
内鍵が開けられて開いたドアに腕を差し込む。
指先に触れたものを掴み上げると、ようやく大きく開かれる。

一瞬で部屋の中をあらため、そこにない姿に掴んだソレを揺さぶると、🌸の所在を問いただした。
奥、と差されたカーテンに駆け寄って捲ると、診察用のベッドに横たわる🌸。

寝顔に力の抜けた足がふらつき膝をついた。
握った手が冷たい。
「🌸」
反応を示さない頬を撫で、再び名前を呼ぶ。

垂れる汗を拭いもせず、そうっと頬に掌全体を添えると微かに温かい。
ゆっくりとした呼吸も感じられて、浅く短くなっていた息を深く吐いた。


「何があった?」
🌸の姿を確認し、ぬくもりに触れたことでようやく落ち着く。
いつの間にか落としていたジャケットをホンゴウから受け取り、事の次第を問う。

ホンゴウの後ろから顔を出したアメリ。
連絡は彼女からだったのだ、と思い出し、差し出されたものを受け取る。

  ✜

(誰だ、)
手書きの似顔絵に見覚えはない。
(まさか、コイツ、)
🌸がこのような状態になってしまった事から、その原因を作った男では、と睨めつける。

今はそれよりも、とアメリに向き直る。
「助かった」
ありがとう、と下げた頭に、アメリは慌てた。
(アメリがいなかったら)
忘れられない光景が蘇り、頭を上げるよう言われても上げられなかった。

ホンゴウから話を聞き、🌸の手を握り込む。
(また、一人にした)
ごめん、と冷え切った🌸の指先に額を当てる。
仮面の男も気になるが、今は🌸のことだけを考えていたかった。
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