依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第52章 ふるえるココロ
🌸に作ってもらった弁当を食べて外出の用意をしていると、電話を取ったセシルに声をかけられた。
「14時の約束、16時に変更したいとのことですが、」
どうしましょうか、と伺う顔に、ついムッとしてしまう。
(🌸の迎えに行けねぇ)
しかし、仕方ない。その程度の変更はよくあることだ。
承諾の返事をして、ポケットに入れた香水瓶と万年筆を取り出したジャケットを椅子の背もたれにかけ、携帯を取り出す。
-こっちに来れるか?エルといたい-
帰りが予定よりもだいぶ遅くなるとは思うが、どうしても会いたくて我儘を言うと、OK!と笑うシマエナガ。
「似てるなぁ」
ついさっき、自分もダウンロードした小鳥に、にやける。
しばしやり取りをして、午後の勤務が始まるというメッセージを14時ちょうどに受け取って、寄り道せずに帰るようにと返信した。
1時間あまりで溜まった事務作業を続けようと眼鏡をかける。
「社長、そろそろお時間です」
同行予定のセシルに声を掛けられて、作業をしていたパソコンを閉じた。
✜
幾度か接待で使われた料亭。出迎えた取引先の社員に、「帰りたい」という気持ちを悟られないよう仕事用の笑顔を作る。
(🌸のメシが食いたい)
時折、話を聞いていないシャンクスをフォローする同行の社員。
あまり酒が進んでいないこともセシルに心配され、ちょっと、と個室から抜ける。
日本庭園を望める喫煙所のベンチに掛け、携帯を取り出すと、出発時に送ったメッセージに返信はない。
メッセージの一つでもあればやる気を出すのに。いや、それはそれでなお早く帰りたくなる、と半分愚痴のような内容と会いたい気持ちを素直に送る。
「社長」
遠慮がちに喫煙所のドアを開けるセシル。
「あの、そろそろ」
暗に戻って欲しい、と言われて、これだけ、と少し煙草を掲げる。既読がつかないそれを仕方なくしまい込み、一度煙草を深く吸い込むと、さっさと終われ、と心中、願って、セシルの後につくように座敷へ戻った。