依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第52章 ふるえるココロ
お待ちしております、と電話を切ったアメリは、ふう、と息を吐く。
その様子を見守ったホンゴウは、ふむ、と腕を組む。
「訳ありか」
しかもあの人関連、と言うホンゴウに、ごめんね、と謝る。
「口止めされてるんだぁ」
「止めれてないけどな」
「不可抗力ってことで...すぐ来るってだからここで待ってていい?」
「むしろいてくれないと、俺じゃ状況説明できねぇよ」
なんか飲む?とマグカップを掲げる彼。奥の給湯スペースに行ったのを見送って、未だ眠っている人に目を移す。
時折、苦しそうに眉間を寄せる。
(マスクで、あ、髭生やしてたな、)
アメリは、彼女を捉えていた人物の姿を思い出しながら、バッグから取り出したスケジュールのメモにペンを走らせる。
(社長より背は低かったな)
見上げる角度が彼よりも少し楽だった、とストライプの仮面のイラストの端に、180cm前後?と書く。
比較的、声は落ち着いていて、年齢は不詳、と覚えている限りのことを書き出していく。
少し進んだ時計に、彼を見上げる。
「ここ、システム入れるパソコンある?」
「ああ、あれなら社員証があれば見れるぞ」
彼が指差すパソコンを借りて予定表から社長の居場所を確認する。
スマホでマップに住所を打ち込むと、ちょっと時間かかりそうだな、とこぼす。
「アメリ、飯食ったのか?」
とっぷりと暮れた空に、首を振る。
「社長来るまでいいや」
丸椅子にかけてベッドの人を見やるアメリを、ホンゴウは見つめる。
いつも明るく明朗で、笑顔の絶えない恋人。
待ち人に陶酔している先輩への愚痴や、差し入れでもらったお菓子が美味しかったことなどをくるくると表情を変えて元気いっぱいに話す姿からは想像つかない、真剣な横顔で書き込んだメモを見返している。
「なんだ、それ?」
「うん、まぁ...情報提供書、的な?」
ふぅんと、彼女に温かいコーヒーの入ったカップを渡し、隣にかける。
「あんま、危険なことはするなよ?」
巻き添え食らうぞ、とぽんぽん、と優しく頭を撫でる。
「なんかあれば、ホンゴウ君呼べばいいかなぁ、なんて考えてました」
ははっ、と笑う頬をつまみ上げる。
鍵がかかってガチャガチャと音を立てる扉。
はやっ!と驚くアメリを置いてドアへと向かうホンゴウ。
ダンダンダンッ!と殴るようなノック音に扉を開いた。
