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依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長

第51章 慣れ始めた日常と刺さる記憶



「お疲れ様でしたー」

警備に挨拶して、すっかり暮れた道を歩く。
バックの中の携帯が光る。
取り出して確認すると、シャンクスからのメッセージ。
-タクシー使うこと-
そんな距離じゃないでしょ、と貧乏性が発動して駅に向かう。
どうやら二人で車に乗るのが大層気に入っているらしく、時間が合う限り送迎をしてもらっている。待ち合わせて車に乗り込むと、「じゃ、行くか」と言って、右手を左手に絡めてくる。
付き合い当初からしばらく続いていたガソリン代のやり取りは、二人で過ごす時の食費を🌸が持つことで決着がついた。

🌸が休みの前日はシャンクスの部屋、その他の日は🌸の部屋で過ごすことが多い。
週末は高確率で彼の部屋だ。接待や招待されるパーティ、知人との食事などが予定されることの多い週末は、飲酒で運転ができなくなるので、駅に直結していて、なおかつ駐車場が確保されているシャンクスの部屋がお互いに帰りやすかった。

初めて一人で彼の部屋に帰った時は、ドギマギしてどう過ごしていいかわからず、ソファの上でただ待っていた🌸に、自由にしていい、と寝室のプロジェクタや映画配信のサブスクの使い方を教えたシャンクスは、以降、お帰りなさい、と🌸が出迎えると非常に喜んだ。

休日前ではない夜に彼の部屋に行く事に、なぜか少しの緊張感を覚える。
洗濯かごで溜まっていた洗濯物を回し、冷蔵庫の中を改める。きっと今日も飲んだくれで帰ってくるシャンクスの夜食か朝食、はたまた昼食となるであろう雑炊の材料を買おうと財布とカードキーと買い物カバンだけ持ってエレベーターに乗った。

安売りされている卵の前で、赤玉にしようか白玉にしようか悩む。
「🌸か?」
ん?と顔を上げてキョロキョロと見回すと、背後にマスクの屈強な男。
「🌸、だよな?」
表情の見えない、変わらない水色と白の【顔】。
同じ買い物かごには、缶チューハイ、缶ビール、瓶酒と大量の酒。『五番』のラベルの瓶は、シャンクスが好んで飲む焼酎だ。

久しぶりだな、と言う彼は、学生時代とそう変わらない。
「キラー、先、輩」
「元気だったか?」
詰め襟の学生服からきっちりとしたスーツへと変わった彼の隣にいつもいた人を思い出し、あ、と声が漏れた。
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