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依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長

第51章 慣れ始めた日常と刺さる記憶


午後のカウンター業務をしながら事務も進める。
ここでの仕事にいくらかは慣れ、後輩に教えられることも増えた。

大きな中央の柱をぐるっと囲うように設置されている総合受付のカウンター。
まだ一人でこなしきれない1年目の後輩とつく。
「あの、この本なんですけど」
「はっ、はいっ!」
まだ少し緊張感のある彼女の対応を確認しながら、パソコンに向き合う。

「あ、えっと、あの」
まごつく声に、少し抑えて声を掛ける。彼女の手元を見ると、背表紙が浮き上がった本。
カウンターの向こうに立つ若い男性が、申し訳無さそうに頭を掻く。
「すいません、家やら学校やら持ち歩いているうちに、」
ごめんなさい、と頭を下げる彼。

「しらほしさん、カウンターのケイミーさんに内線かけてくれる?」
「は、はい!」
「『汚破損対応お願いします』って言ったら、わかってくれるから」
はいっ!と緊張気味に返事をして受話器を取るしらほしを横目に見ながら、利用者の対応をする。
「図書の破損、汚損などについて担当の者を呼びますのでしばらくお待ち下さい」

続きの対応をしらほしに指示してカウンターに戻る。
無事、しらほしが担当に引き継いだのを確認し、ふう、と椅子に腰掛けた彼女に声を掛ける。
「中の職員にどんどん対応回しちゃっていいよ。ここでやると、詰まっちゃうから」
「はいっ!ありがとうございます」
いつも少し自信のない彼女が、よし、と意気込んで顔をあげる。

15時を過ぎて、しらほしと交代したロビンとカウンターにつく。
幼稚園や小学校帰りの親子連れや子どもの利用者が目立って来る時間帯。両親や祖父母。きょうだいや友人と来館する小さな利用者が行き来する。
その中に、園の制服を着た男の子と女の子を連れた男性を見つけ、つい目が止まる。

父親らしき人の背格好も髪の色も彼と共通するところはないけれど、女の子を抱き上げて男の子の手を引く姿にシャンクスを重ね、密かに微笑んだ。
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