依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第50章 Girls Talk
お開きにしましょうか、というイヴの言葉に、財布を出そうと鞄を開く。
「あ!」
そこにあった封筒に、アメリは慌てた。
セシルに渡してくれ、とシャンクスから言付かった封筒。
しまったぁ!と両手でセシルに突き出して頭を深々と下げる。
「すいませんっ!社長から言付かっていたのすっかり忘れてて」
突き出されたセシルは、少し驚いたあと、苦笑いして受け取った。封がされたそれを開くと、イヴに向きなおる。
「イヴ、彼の前で話したわね?」
「話してないわ」
何の話か、と首を傾げたアメリ。
「アメリ、食事に行くことを幹部の誰かに話した?」
「え?いえ、」
そういえば、とイヴが顎の縁に人差し指をあてる。
「会議資料まとめてる時、彼、横を通ったわ」
煙草だったみたいだけど、と言ったイヴに、それだ、とセシルは溜息をついた。
「その時、食事に行くこと話してたんじゃない?」
セシルは封筒の中身を取り出してみせた。数枚の紙幣に、アメリは目を見開き、イヴは、あら、と呟く。
同封されていたメモ紙をイヴが覗き見る。
「『楽しんで!羽目を外すのは程々に』...ご自身に言ってらっしゃるのかしら?」
ぶはっ!と吹き出したアメリ。
「しゃ、社長...お酒、弱いですもんね」
会社の飲み会でも、一番に酔うのは彼。
弱いけど酒好きで、真っ先に飲んでは真っ赤になって酔い潰れ早々に寝てしまう彼を、ザルのベックマンがほとほと呆れながら連れ帰るのが恒例だ。
そして翌日、システムで予定がすべてキャンセルされ、二日酔いの真っ青な顔で頭痛い、気持ち悪い、とまともに椅子に座れずに応接用のソファで喘ぐ彼を、幹部の誰かが呆れて上の自宅に連れ帰るのだ。
「飲み会ある日の社長、朝からワックワクですもんね」
遠足楽しみな小学生並み、とアメリは苦笑いした。
「せっかく頂いた好意ですもの。甘えましょ」
会計をしたが、紙幣数枚と小銭が残った封筒に、どうしましょう、とアメリが困る。
「明日、彼が好きそうな差し入れでも買ってきて」
アメリから封筒を摘み上げたイヴが、セシルに押し付ける。
封筒を受け取ったセシルは、好物知らないよのね、と困りながらも何を買おうかと楽しみにしているような顔で、大事そうにメモと封筒をバッグにしまった。
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