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依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長

第50章 Girls Talk


「ってわけで、社長とどうこうってことはないんですよ」

向かいの席でカンパリオレンジを飲んでいるセシルの顔色を窺うアメリ。
私はアメリちゃんを信じていいと思うわ、とイヴがスパークリングワインのフルートグラスを傾ける。

「お昼を持参し始めたタイミングが同じってだけで、中身だって同じものじゃなかったでしょう?
わざわざそんな工作してまでお弁当持たせるかしら?」
そうそう!とアメリは激しく頷いた。
イヴが遠回しに、アメリにそんな器用なことができるわけがない、と言っていることに気づいたのはセシルだけだった。
「あと、私、彼氏います!社長じゃないです!」
あらそうなの?とイヴはメニューを開いて足を組み直す。

「アメリちゃんもこう言ってるし。社長は恋愛事に本気になれない人よ?ましてや、社内の女の子になんて手を出さないわ」
「そうなんですか?」
アメリはあれ?と首かしげた。
「社長、トラウマあるのよ」「え」
まあ、噂なんだけど、とイヴはスパークリングワインを飲み干す。

「会社を裏切った彼の元カノ」
ようやく口を開いたセシルは吐き捨てるように言った。

「なんですか、それっ⁉」
飲んでいたカシスオレンジテイストのノンアルコールカクテルを吹き出しそうになったアメリ。
あら、知らない?とイヴは手を挙げて店員を呼ぶ。
「私も同じのお願い」
そう言ってカンパリオレンジを飲み干し、セシルはピンチョスに手をのばした。

「学生時代、彼とお付き合いしつつ、最終的には彼の天敵と手を取り合った悪女」
セシルの語るとんでもない内容にアメリは、おお、と慄く。
「って噂。そういう裏切りにあって、社長は恋愛に本気にならなくなったって言うのが通説」
辞めた先輩による話だけど、とセシルは頬杖をついた。
「だから、彼は誰のものにもならない。お遊びばっかり」

溜息をつくセシルに、オーダーを終えたイヴは慰めるでもなく言う。
「わかってて好きになったのは、あなたの責任」
「わかってる。わかってる、けど」
セシルは、カンパリオレンジが入っていたグラスに反射する照明を見つめた。
「それでもやっぱり、心が欲しいと思っちゃうのよ」

イヴとセシルの言葉に、アメリは彼のデート現場に鉢合わせてしまったことを言うべきか言わないべきか、二人をキョロキョロと見比べながらノンアルコールカクテルを飲み干した。
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