依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第50章 Girls Talk
「アメリちゃん」
「ふぁい?」
昼休み。
執務席でビルの下に入っているサンドイッチショップのスモークチキンサンドを食べていた。
向かいのセシルは、午前からベックマンの付き添いで外に出ている。
呼び掛けたイヴから差し出された、可愛らしいメモ紙。
…お弁当、やめたの?…
そう書かれた紙に、なんのこっちゃ?とサンドを飲み下して首を傾げる。利き手から持ち替えてペンを取る。
…私、基本買い込みですけど…
…この前のお弁当は?…
姉に押し付けられたあれだ。
…あれは、姉に押し付けられたものです…
え、と小さく呟いて、目線を横に流すイヴ。
そこには、シャンクスが箸を咥えたまま、パソコンを扱っている。画面に隠れているが、机上に弁当箱を出していた。
追加で差し出されるメモ。
…あなたが作ったんじゃないの?…
んんっ⁉と目を見開いて首を振る。そこでアメリは、イヴの勘違いに気付いた。ムグ、とサンドを口に押し込んで、机上のメモ紙を破り取る。
…あの日はたまたまです!姉の彼氏が出張で!
あぶれた分を持ってきただけで無関係です!…
掲げて見せて、書き足す。
…それ以降、持ってきてないじゃないですか…
ああ、といった顔でいつも弁当を持参しているイヴにコクコクと頷く。
え、と空席の向かいに目を向けると、イヴがペンを取った。お茶でサンドイッチを流し込んで受け取る。
…セシルちゃん、気にしてたわ。
今朝も、バスも電車も遅れてたのにって…
自転車通勤なので、それらの影響を受けなかった。
何を気にするところがあったろうか、と追加のメモを受け取る。
…朝、いつもコーヒーを気にしてるって…
…コーヒーショップのカウンターで
彼といるのを見たって言った人もいたし…
あれかぁっ!と慌ててペンを執るが、書き出そうとして止まった。
「他言しないでくれ」と言われているのだ。
先輩よりも上司の命令のほうが優先である。
恋人と来ていたようだ、と書けずに、どうしよう、と固まる。
…コーヒーは、品種があまり得意な味じゃなくて
コーヒーショップでも偶然隣り合わせただけで
それに私、自転車通勤なんで…
そう、と頷くイヴ。
綺麗に食べきった弁当箱を手に、給湯室に向かうシャンクスを二人して目線で追う。
「でも、明らかに女性の影があるのよね」
イヴの言葉に返す言葉が見つからず、曖昧に笑って誤魔化した。
