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依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長

第49章 JEALOUSY


空回った鍵を握ったまま停止する。

(鍵のかけ忘れ?泥棒?)
こじ開けたような跡はない。けど、確実に施錠されていなかった。
解錠できる鍵の持ち主はもうひとりいるが、このタイミングで居るとは思えない。

ゆっくりと鍵から手を離し、足音を立てないように下がる。
(誰かいるの?)
警察を呼ぶ?と震える手で携帯を取り出す。
いつの間にか、着信もメッセージも来なくなっている。

ゴクリ、と溜まった唾を飲み込んだ時、ドアの向こうから物音がして、ひっ、と下がる。
落したバッグがドサ、と音を立て、中から聞こえたパタパタッと駆ける音に、身体が震える。
(逃げなきゃ、)
ザリ、とコンクリートを靴の底が擦る音にギクリとした時、ガチャ、と動いたドアノブに息を飲んで駆け出した。


日頃、まともに運動していないのですぐに息が上がる。
走りにくいヒールを脱ぎ、拾いもしないで再び駆け出す。
(警察署か、交番か)
もう少し先に駐在所があったはず、とストッキングの脚で駆ける。

待て、と聞こえる声に、待てるかっ、と走り続けるがもう息は絶え絶えで体力が持ちそうにない。
手に握ったスマホが震える。
なんとか画面を見ると、会いたくない最愛の人から。
応対ボタンを押して、耳に当てる余裕もなく叫んだ。

「っ、助けてっ!シャンクスっ」
息苦しさと恐怖で、ポロポロと涙が落ちる。
(もう、無理っ!)
躓きそうになりながら角を曲がるとへたり込んだ。
ザッとアスファルトを擦る音に、ギュッと手元の携帯を握りしめ、目を閉じた。


-「🌸」-
携帯と、真上から聞こえる声に目を開けると、どこかで見たサンダル。
通信の途切れた携帯を震えながら握る手に重ねられた、温かい大きな手に顔をあげると、首に汗をかいて少し息を上げているシャンクスの姿。
「すまん、」怖がらせて、と頬の涙を指で拭う。

「っふぅ、えっ」
恐怖が途切れ、安堵が涙になって溢れる。
「い、るわけ、ないと、」「どうして」
シャツの袖で目尻の涙を吸い取る。
「だって、家族が」
はぁ?と頬を擦る手が止まる。

「お姉ちゃんと弟、」「何を言っている?」
訳がわからない、という顔で、瞬く目から落ちた涙をまた、拭う。
「奥さんと、子ども二人いるでしょ?」
「...俺にかっ⁉」
何の話だよ⁉と戸惑うシャンクスを、え?と見上げた。
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