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依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長

第49章 JEALOUSY



(確かに、「結婚してない」とは言ってないわな)

彼は、「恋人」がいたのは5年も前、とは言ったが、「妻子がいない」とは、言っていない。
指輪をしていない夫婦なんて、自分の両親を含め、ゴマンといるわけだし。

(あー、離婚して奥さんが子供を引き取ったって可能性もあるのか)
遠目なので確かではないが、男の子の方は暗い髪色で、出迎えていた女性と近い色だったと思う。
彼に抱きついていた女の子は、左右で紅白に分かれた不思議な色合いの髪だったが、彼も赤髪だ。
(週末婚的なことかも知れないし)
そうなら、独り身に見えたあの部屋や彼の雰囲気にも頷ける。

はてさて、とさっきから鳴り続けている携帯を眺める。
待ち受けに表示される不在着信の件数がえらいことになっている。
初めて彼の部屋で迎えた朝に見た時よりも多いと思う。
今度は、着信ではなくメッセージ。
-どこにいるんだ-
疑問符もない、短文のそれを皮切りに次々と送られてくる。
 -何かあったのか- -電話に出てくれ-
待ち受けの通知で確認していると、再び着信。
マナーモードで震え続ける。留守電を設定していなくてよかった、と安息する。
今、彼の声を聞いたら、きっと自制できずに彼を責め立ててしまうだろう。

「ことごとく赤い髪の男に縁がないな」
少し息苦しさを感じる喉を撫でて、フーッと長く息を吐く。
自宅の直前。いつものコインパーキングに車はない。
「流石に子供に会った直後には来ないか」
それならば、なぜ彼はこんなにメッセージを送ってくるのだろうか?
まさか、あの子供を出迎えた女性と間違えているじゃ、と眉を顰める。
子供は、10歳前後。2,3歳の差があるように見え、多分、女の子のほうが年上だろう。

しかし、出迎えていた女性は、自分とそう年は変わらないようにみえた。早くに子どもを産んだにしても、子供が大きすぎやしないだろうか。
「後妻、とか?」
彼が20歳前後の時に子供が生まれ、何かしら事情があって母親とは別れ、子供は引き取った。その後出会った彼女と子どもを育てているのかもしれない。最後の恋人が5年前、というのは、5年前には入籍していた、とも考えられないか。

結婚を考えているといった後の彼の言葉。

今すぐにと言える状況じゃないものがある

それは、彼女や子どもたちのことだったんだろうか。

差し込んだ鍵が空回った。
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