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依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長

第48章 愛し子よ


途切れることのない呼び出し音に、もう一度コールし直したが、繋がらない。
なんのアクションも起きない画面を見つめ、悩む。
電話に出られないときくらいある。
この時間帯なら、残業か風呂か。

落ち着いたらコールバックしてくれるだろう。それまでどうしようか、と考えながら、抑えきれない気持ちにソワソワする。
ちら、とナビの画面の時計を見た。
カーキーと共にキーリングに下がる合鍵を確認し、ハンドルを握った。


突然来られて困る仲じゃないはずだ、と携帯を気にしつつ、社教センターや自宅から向かういつもの方角とは真逆から🌸の部屋へ向かう。

軽めのインターホンの音。
「ん?」
もう一度、ゆっくりと鳴らす。
中に呼び出し音が響いているのがわかる。
何故か大きく感じる心音に、合鍵を取り出す。
シリンダー錠を回すと、施錠はされていた。

まさか、と少し前の記憶が蘇り、ドアを開く。
「🌸っ?」
真っ暗な部屋が、あの時を彷彿とさせてドクッと心臓が鳴る。

「🌸っ!」
ガチャン、と扉が閉まった音と蹴り脱いだ靴がカコン、と三和土に落ちる音が響いた。電気をつけたリビングに人がいる様子がなく、奥のベッドスペースにつながるカーテンを捲る。
「🌸?」
きちんとたたまれた布団が簀子にある。
ベッドスペースを見渡し、リビングを横切る。
「🌸!」
片付いているダイニングテーブルと、干し籠にいくつかの食器と調理器具。
「🌸」
風呂とトイレに電気はついていない。

何度呼んでも、所詮は1LDKの部屋。声が届かないスペースなどない。
ドクドクと脈打つ心臓に、少しだけ息が上がる。
携帯を取り出し、短縮の一番上にあるナンバーにかける。
鳴り続けるコール音が焦りを助長する。

「くそっ!」
なぜ出ない、なぜいない、と何度かけ直しても繋がらないのでメッセージに切り替える。
こんなことならGPSでも仕込んでおけばよかった、と居場所を尋ねるが既読にもならない。
もしかして、ローか🎀といるのだろうか。
まさかどこかで倒れていたら、と焦りが増す。生気のない🌸の顔が過ぎって舌打ちをする。

考えても仕方ない。
最悪虱潰しに思い当たるところを、とローのメモリーに切り替えた時、玄関から微かな物音がして振り返った。
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