依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第8章 狩人の試行錯誤01
男たちの後方死角に回り込んで、背の低いガードレールに片足をかけて乗り越えると、彼女らに伸びていた腕を掴んで背後に降りた。
着地とともに掴んだ腕。ちらり、と肘の裏を見て、顔を顰める。
「俺の連れなんだ」
咄嗟に顔を逸していた彼女が顔をあげた。
「手、離してもらっていいか?」
ひねくれた趣味にも興味はない、と自分の目線よりも1つ2つ低い位置の男を軽く睨めして、少し手に力を込める。
「離せ、と言っている」
癖のない黒髪の女が、柔らかな亜麻色の女を庇うようにして見ていた。
ゾク、と熱いものが体を這うような感覚。
風邪をひいて発熱している時に覚えがある、と思ったが、即座に、(違うな)と自分で否定する。
(あー、厄介かもしれん)
ふわり、と香った季節外れな藤の香り。
一瞬で脳内にこの後のことをシミュレーションしようとして、男の腕を掴む手に力が入ってしまった。
互いに見つめ合い、彼女に戸惑いの様子が見えたので、笑いかける。
腕を振り払おうとする男。
掴んだ手首の筋を指先で押し、力を緩めさせる。
しばらく睨み合うと、舌打ちをして手を払う。
後ろで見ていた男が前に出ようとしたのを目線で制する。
行くぞ、と去っていく男達の姿を睨み送り、呆然としている二人に向き直る。