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依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長

第47章 不安は不安を引き寄せる


きっちり割り勘で精算し、それじゃ、と挨拶する。
「泣かされたらいつでも言ってこい」
赤髪を確保してやる、と珍しく冗談を言うスモーカー。
「頼もしすぎます」と笑う🌸を、ほら、と顎でしゃくって促す。
「お気をつけて」「お前がな」
会釈して歩き出す。
少し先で振り返ると、早く行け、と手で払われた。


駅前の交差点で立ち止まると、彼はすでに背を向けて逆方向へ歩きだしていた。
バッグから携帯を取り出し、電話帳から表示しては掛けられない番号を眺める。
自宅の電話は、セールスばかりだからと出ないことが多い。両親の携帯番号は把握しているが、携帯にはかけた履歴もかかってきた履歴も残っておらず、メッセージアプリのアカウントも持っていないので、連絡手段は11桁の番号にかけるかショートメッセージを送るか手紙を書くしかない。
うーん、と悩んで携帯をバッグにしまった。

向かいのロータリーには、迎えの車やタクシーが停まっている。
スッと隣を通り過ぎて、ロータリーに入った赤い車体。
先の車寄せにハザードをたいて停まった。
ナンバーから彼の愛車だと気づいた。
運転席から出てきた赤髪の頭。頭一つ分大きい背丈に、やっぱり、と口元がゆるむ。
声を掛けようか、と足を向けて立ち止まる。

おもむろに彼は後部座席のドアを開けた。
そこから飛び降りた小さな影が一つ。車内を覗き込んでから腕を伸ばした彼に抱き上げられるもう一つの小さい影。
足元に降り立った二つの影の頭を撫でる彼の顔がはっきりと見えた。
二人に話しかける彼に、頷く黒い髪の後ろ姿。
左右で白と赤に分かれた髪を輪にして結った方の小さい影が、勢いよく彼の首元に抱きついた。

呆然と眺めていると、何かに気づいた彼が立ち上がる。
首元から離れない一人を片腕で抱き上げ、足元に纏わりつく一人を宥めながら、駆け寄ってきた女性に笑いかける。
少し話すと、抱き上げていた子を下ろして、車から出した荷物を子供に渡した。
二人と手を繋ぐ彼女は、会釈して駅に向かう。大きく手を振って彼女の手を引く男の子と、名残惜しそうに手を引かれている女の子。3人に手を振り、見えなくなると車内に戻る。

ヴーとバッグの中で鳴った音に、大仰に驚く。
鳴り止まないそれに表示させれるのは、彼の名前。
点滅した歩行者用信号が、赤になった。
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