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依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長

第47章 不安は不安を引き寄せる


飲み干した二杯目のジョッキをテーブルに置き、腕を組む。

「赤髪は、いくつなんだ?」
「3月で31です」
3月という単語に反応すると、誕生日一緒なんです、と笑った。
未だに、年が明けると3月9日の曜日を確認してしまう癖が抜けていない自分は、今年は月曜日で来年は火曜日であることを思い出す。

「会いたい理由に過去のことも含まれて入るのかもしれないが、9割方、恋人として挨拶しておきたいだけだろう」
自分は知らなかった過去と会ったことのない両親に、少しだけ後悔が残る。
「スモーカーさんは、私の両親に興味ありました?」
「...いいや」
今更掘り返したところでなんの得があろうか、と嘯いた。

両親と不仲であることは、過去に聞いたことがある。
あまり深掘りしてやるべきではない、と判断し、その手の話題は避けていた。
自分の家族についても、ろくに彼女に話したことがない。


「避け続けていたものと縁遠いものだと直視してなかったものが、突然目の前に現れてどうしたらいいやら」
はぁ、と深く吐き出された溜息。

「🌸は、赤髪と結婚したいとは思わないのか」
うーん、と眺める指先を弄んでいる。

「結婚って、夫婦って、何なんでしょう?」
彼が触れた左の薬指の根本を撫でる。

「私の中で、そういうものだと思っていた夫婦の形は両親で。けれど、それが私の偏見で作り上げられていたものだと知って...何だか怖くて。私が、彼とまともな夫婦になれるのか」
「『まとも』ってなにがまともなんだ」
乾き始めていたスモークチキンの最後の一切れを指でつまみ上げたスモーカーを見る。

なにがまとも、と呟く🌸。
嚥下しておしぼりで手を拭くと、彼女を見やる。

「🌸の真面目なところはいいところだが、時たまに頭が固すぎてテメェでテメェの首締める癖がある。愛しているから一緒にいたい。そのために夫婦になるという選択をする。それの何がおかしい?」

お前は愛されているだろう、と飲み屋で偶々会った時に、彼女を抱き寄せた奴の目を思い出す。

「一番手っ取り早いのは、その不安をそのまま赤髪にぶつけることだな」
遠回りしてると迷子になるぞ、と小さい頭を小突いてやると、すでに迷子です、と笑って冷めた山芋鉄板をパクリ、と口に入れた。
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