依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第47章 不安は不安を引き寄せる
「生ビールとジンジャーエール」
席につくなり店員に言いつけるスモーカーの向かいに腰掛けながら、懐かしい店内をキョロキョロと見回す。
「異動してないんだな」
無造作に空いた隣の席に置かれたジャケット。
「はい。スモーカーさんも変わらず警備5課ですか?」
「ああ」
おまたせしましたー、と威勢のいい声で運ばれたジョッキとグラス。
「注文しますか?」
愛想のいい店員に、チラ、とスモーカーに目線を向けた🌸は、メニューに目を通す。
「スモークチキンとチーズの盛り合わせ、ピリ辛たたききゅうりと山芋鉄板...お願いします」
以前と変わらないメニューから、定番だった品を選んだ。
「お疲れ様です」「ああ」
カチャン、とジョッキの厚いガラスと細いグラスの薄いガラスがぶつかる。
大きめのジョッキから半分ほどを一気に飲むと、ジャケットから煙草とライターを取り出したスモーカー。
🌸が寄せた灰皿を、左から右に移したスモーカーに、あ、と声が漏れる。
「ごめんなさい、つい」
些細なことで謝る🌸に、顔を背けて紫煙を吐く。
「やはり赤髪とはそういう関係か」
ゴクリ、とビールを一口飲む。
「一応、はい。」
ジンジャーエールを少し飲んだ🌸の表情に、眉根を寄せる。
「何だ、一応って」
曖昧な関係なのか、と目線が厳しくなる。
「そういうわけじゃなくて...」
あー、んー、と珍しく彼女の歯切れが悪い。
「親に会いたいと、言われまして」
お待たせしましたー!とテーブルに並ぶ皿。
律儀に店員にお礼を言う🌸から目が離せない。
「長いのか?」
スモークチキンを取りやすい位置において、いやいや、と首を振る。
「半年も経ってないですよ」
「...それでも、結婚と」
「いえ、それがわからなくて...」
どういうことだ、と箸を手に取る。
「交際相手の親に会いたい理由なんか、一つしかないだろう」
「それがですね、ちょっと色々ややこしくて」
なんとも歯切れの悪い🌸に、相談なら乗るぞ、とチーズの皿を彼女が取りやすい位置に寄せた。