依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第45章 過去の真実を知るひと
すぐに気づいたよ、とベックマンはコーヒーを飲む。
覚えのない話に、シャンクスが顔を顰める。
「アンタはあの時期ごたついて、しばらくOJ関係の仕事まで手が回ってなかっただろう」
あー、と歯切れ悪く頭を掻くシャンクス。
その間、代わって業務をしていた中で会ったと言う。
「いつも返済は出先で待ち合わせていたんだが、その日、直前に君の父親から、待ち合わせの場所に行けないと連絡があった」
初めてのことだった、と振り返る。
「娘が熱を出して病院に向かうために日にちを改めたいと言われたんだが、こっちも忙しい時期で再び時間を取れそうになかったんで、病院で待ち合わせた」
🌸は、難しい顔で口を一文字に結んでいる。
「『少し待ってくれ』と、娘を背負って病院に駆け込む両親を見ていたよ。しばらくして、父親だけが戻ってきて金のやり取りをした。そのときに初めて娘がいることを知った。それが君だ」
この日の出来事だった、と完済証書の日付を指す。
「覚えています」
静かに🌸は口を開いた。
「公務員採用試験の最終結果を待つだけとなって、気が抜けたのか体調を崩して...直前に出掛けた両親に電話したんです。帰ってきてほしいって...初めて、そんなお願い事をして...」
ギュッ、と自身の左腕を右手で掴む。
「そんな用事だったなんて、」
泣くのを我慢しているような顔の🌸が、ハッとして顔を上げた。
「あの!返済の頻度ってどのくらいでしたか?」
「月に一度」月に一度、とベックマンの声を繰り返す。
「待ち合わせの場所って」
「その時々だったが、大体どこかしらの立駐がほとんどだった。自分も相手も車だったからな」
月に一度の立体駐車場。
「いつも夫妻揃って返済に来ていた。だから、子供がいるとは知らなかった」
あの若さだったし、と今のベックマンよりも若かった両親について話した。
「まだ20代の、親元で生活していてもおかしくない年頃の夫婦が揃って借金など珍しいな、とは思っていた。遊ぶ金欲しさにそこまでか?とも考えたが、子供がいると知ってわかった。
母親は子供を抱えて高校を卒業。同級生の父親は産後間もない妻と乳飲み子を養うために、借金してまで車を買い、仕事を掛け持ちして働き詰め。ろくに貯金もなく、両親にも頼れず、必死で子供を育てようとしているんだと」
