依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第7章 突発的加速
彼が頼んだ酒は、柑橘の風味が混ざる懐かしい乳酸菌飲料の味がした。
「おいしいです」
「気に入ったか?」
「はい。でも、飲みやすいがら飲みすぎちゃいそう」
「そりゃあ、危ねぇなぁ」
自分で飲ませておいて?と笑うと、そうだな、とブルー・グレイの瞳を細める。
「お酒、詳しいんですか?」
「独り身で、それなりに忙しくさせてもらってるからな。
あまりこれといった趣味もないもんで、時間ができると寝るか飲みに行くか。
休みの日はけっこう堕落した一日を過ごしている」
1杯目を早々に飲み終わってしまうと、2杯目をオーダーする。
「あの、あまりたくさんは...」
「そう強い酒じゃない。これで最後でいい」
な?と笑いかけるシャンクスに、はい、と頷く。
置かれたロングクラスには、薄い琥珀色。
「昼間のカフェで紅茶を飲んでいただろう。度数も優しい」
いただきます、と口にすると、紅茶の香りがふわりと広がって、ジンジャーエールの風味で飲みやすい。ほんのり、ベリーの甘みもある。
「ダージリンクーラー。紅茶とフランボワーズのリキュールにレモンジュースとジンジャーエールを足して炭酸で割る」
紅茶のお酒があるなんて知らなかった、と🌸は、飲み過ぎちゃいそう、とグラスを傾ける。
じっと見つめる視線に首を傾げると、🌸の結っていない髪をひと束、すくい上げる。
「んっ」
ピクリ、と跳ねた🌸に気づいているのか、いないのか。
くるくると指先に絡めたり、掬ってはサラリと落ちていく感触を楽しんでいる。
「染めないのか」
「一度、学生の時に染めました。
結構明るい色を入れてもらったんですけど、ブリーチが怖くてカラーリングだけしたせいか、色抜けが早くて」
それ以来染めてません、と毛先を弄んでいる指先を見つめる。
スッ、と耳たぶを指先で撫でられた。
「ひゃっ」
ビクッとして身を引いた🌸に、一瞬驚いた顔をしたシャンクスは、揺れた椅子ごと🌸を支える。バランスを崩して転げ落ちそうになった🌸は、とっさに目の前の腕にしがみついた。
「大丈夫か?」「ご、ごめんなさい」
ふわり、と香りがかすめる。
(海の香り...)
仄かな香りに顔を上げると、ブルー・グレイの瞳の中に自分が見える。
近距離で見つめあっていると、段々と体に熱がまわるのを感じた。
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