依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第7章 突発的加速
ラウンジのある地下に降りると、🌸、と後ろから声をかけられた。
シャンクスは、先程までのカチッとしたスーツではなく、襟ぐりの深く開いた黒のリネンシャツにライトグレーのジャケット。ロールアップされたパンツに、足元はサンダル。
シャワーを浴びたのか、口もとの髭がなくなっていて、スーツの時は後ろに流して整えられていた髪が柔らかく癖を持っている。
「時間も時間だから断られる覚悟もしていた」
どうしても話したくて、と気恥ずかしそうに笑っている。
「私も、もう少しシャンクスさんとお話してみたいと、思っていたので」
少し笑みを濃くしたシャンクスは、さあ、と腕を差し出した。
軽くその腕に掴まると手慣れた様子でエスコートされる。
「酒は飲めるか?」
「1,2杯なら」
十分だ、と頷いて、バーのボーイに案内されたカウンターへつく。
レディファーストが手慣れていて、ハイチェアを座りやすいように支えてくれる。
少し緊張して腰掛けると、彼は隣に腰を落ち着けた。
バーテンダーが差し出したおしぼりを受け取ると、酒の好みを聞いてくれた。
「辛いものより甘いものが好きですが、甘すぎるとちょっと」
詳しくないのでおまかせします、と言うと、わかった、と頷いた。
「グランドスラム。彼女にプレリュードフィズを」
どちらも🌸には聞き慣れない単語だった。
バーだし、カクテルの名前なのだろうということはわかったが、どんな酒なのか見当もつかない。
「髪を下ろしていると、あどけないな」
軽くカウンターに腕を置いて、少し、体をこちらに向けている。
「メイクもあるか」
少しパウダーをはたいて、発色するリップを塗った程度のそれに、もうしっかりメイクするべきだったか、と目線を落とす。
お待たせしました、とカウンターに置かれた2つのグラス。
彼の前に置かれたカクテルグラスには煌めく琥珀色。
自身の前には、オールドファッションドグラス。
グラスに掛けられたレモンがピンクを引き立てている。
いただきます、とクラスを持つ。
「乾杯、しますか?」
「そうだな」
じゃあ、と穏やかに笑う。
「旅の安全を願って」
見つめる瞳に少しの誂いが見え、気を付けます、と柔らかくグラスをぶつけた。