依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第44章 わたしが愛したあなた
「『本性』『本質』そのものとして欠くことができない、最も大事な根本の性質・要素。どちらも同じ意味の言葉ですが、人に当てはめて言えば、『本性』は、底の方の軸や根となる部分。『本質』は、その上に成り立つ樹木」
話しながら、こっちか、と新しい破片を手に取る。
「見上げれば緑眩しく実り豊かでも、根本を見ると腐れ始めていたり、逆に、根はしっかりと張っていてびくともしなさそうなのに、実どころか葉もなく、細い枝を数本伸ばしているだけのものもある」
四辺の内の一辺が繋がる。
「シャンクスさんは、どんなに遠くからでも彼だ、とわかるほどに花紅柳緑よろしくそこに立っている。けれど、その根の本性は、剣戟森森。実は冷徹で、時には何様にも牙を剥くように恐ろしく、厳しく、激しい。
遠くからでも目に入る葉や実が、それを映して禍々しいものなら誰も近寄りはしない。でも、つい見惚れてしまうほどに艷やかで豊潤だから人は近づく。見上げたまま近づくと、遠くからは見えなかった根本の刃にザクザクと足を裂かれる。
あの人の怖いところは、その刃を隠すのがうまいところ。そして時に、その痛みが恍惚とするほどに甘いところ」
無いなぁ、と下辺を繋ごうと欠片を探す。
「だから、私は必死なんです」
あ、と手にした2つをくっつける。
「必死って?」
向かいで逆さま切り裂きパズルを着々と完成させていくヤソップ。
「根本の『本性』に躓かないように」
🌸が欠片一つを繋げているうちに、ペタペタとヤソップは長辺を組み上げている。
「気づいてないよ、あなたは隠しきれているよ、と言いながら鈍く光る刃をうまく避け歩く。彼は、その気になれば、よたよたとへっぴり腰で歩み寄る私を強引に引き寄せることも突き放して剣先の道に倒すだってできるのに、それをしないのは、過去にそれをやって失敗しているから」
二辺が完成し、三辺目もヤソップの手によって完成直前。
失敗に絡んでいるのが、時期なのか彼女なのか、と🌸が長辺一つを作り上げる頃には、ヤソップによって外枠が完成していた。
「『ほんとう』の彼(道)はそちら側にあるのに、気づかないふりでこちら側を歩いたのは、正解だったようです」
割けずに一つのピースとして残った過去の彼を指でなぞった。