依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第44章 わたしが愛したあなた
片付けは自分が、と申し出てキッチンに立つ。
パソコンを立ち上げて、何やら作業を始めるシャンクスと、腹が膨れた、とソファに寝転がるルゥ。
袖を捲くってキッチンに入ってきたヤソップが、洗い終わった食器類の泡を流し始めた。
「すみません。ありがとうございます」
「お安い御用だ」
手慣れた様子で食洗機に詰めていく。
全て洗い終わり、桶に溜まったお湯を流してシンクを拭き上げると、シャンクスに呼ばれた。
「手、貸せ」
両手を差し出すと、こっち、と左手を取られる。
パソコンのサイドにあるUSBポートに刺さった小さな機材に、薬指の腹を押し当てられる。
ピピッとパソコンが小さな音を立てると、もういいぞ、と言われて手を離す。
「暗証番号、4桁」
パソコンの画面を向けられて、しばし悩む。
「誕生日関連の数字は禁止な」
防犯上はじかれる、と液晶に映し出されたプロフィールの誕生日を指差す。
「住居者向けのエントランスに入るには、このチップがついたカードを持ってないとドアが開かないようになってる。
地下からなら、ドア横のセキュリティボックスを開けて、暗証番号と静脈認証。
地上からなら、エントランスくぐったら、オートロックシステムにカード翳して暗証番号。
どちらからでも解錠されたら、エレベータが自動で来る。
エレベータにカード翳したらドアが開く。翳されたカードの部屋がある階にしか止まらない」
説明を聞きながら、4桁の数字を打ち込んだ。
画面に「確認中」の文言とゲージが伸びていく。
「各部屋の鍵は、翳されたカードに登録された指紋の一致で解錠できるようになってる。スペアはいくらでも作れるが、たとえ同じ部屋の住人でもキーの貸し借りはできないからな」
随分頑丈なセキュリティだ、と感嘆すると、ゲージが満タンになってパソコンに繋がれていたカードリーダーのランプが赤から緑に変わった。
機材から引き抜かれたクリアレッドのカード。
シャンクスの手から受け取ると、ほう、と大きく息をついた。
視線を感じて彼を見やると、ゆっくりと髪を撫でられた。
「昨日は、ゴメン」
もうしないから、と頬に降りる浅灼けた手。
「私も、どうしたらいいか分からなくて...混乱して、ごめんなさい」
「🌸は、悪くない」
だから謝るな、と両手を包み込んで見上げるブルー・グレイに、頷いて微笑みかけた。
