依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第44章 わたしが愛したあなた
「んん」
はら、と肩から落ちたのは毛布のようだ。
見慣れない薄暗い部屋を見回す。
(執務、室?)
応接セットのソファに寝ていたようで、ムクリと起き上がって、ダークベージュのそれを拾い上げる。
ゆっくり呼吸すると、少し、意識が晴れてきた。
部屋を見回すと、寝ていた革張りのソファの応接セットを中心に、壁際にキャビネットと書棚。窓を左手に見る広い執務机には、開きっぱなしのノートパソコンとデスクトレー。
机に主はいない。
毛布を畳んでソファに置くと、壁にかけられた時計が10時前を差していて焦った。
(やばっ!寝すぎたっ)
遅刻だ、と慌てて立ち上がると、カレンダーが目に入る。
(あ、日曜、か)
当番出勤でもなかった、と力が抜けてソファに座り込む。
きょろ、と再び部屋を見回すが、人影はない。
けれど、執務机にあるペントレーの上の赤い万年筆と丸い香水瓶は、見覚えがある。
「あ、」
昨夜のことを思い出して、溜息をつく。
ソファの端に寄って膝を抱えると、そこに顔を埋める。
(傷つけたかなぁ)
手を伸ばす彼に恐怖を覚えてしまった。痛みに歪み向けられた目線と、明らかに、しまった、という顔のシャンクスを思い出し、きゅう、と小さく縮こまる。
静まり返る部屋に、隣の部屋から声がした。
「ったく、こんなところで寝てら」
この声、と顔をあげる。
「嬢ちゃんはいねぇみたいだな」
(ヤソップさん?)
「帰ったのか?」「ならなんで頭はここで寝てる?」
(ルゥさんだ)
どうしよう、と俯いていると、ドアがノックされる。
「おーい、🌸?そこにいるのかぁ?」
「ぁ、い、います!」
ルゥの声に扉に駆け寄って開くと、おはよう、と丸いサングラスの奥の目が笑った。
「あの、昨日...その、ごめんなさい」
楽しい場を壊してしまったことを謝ると、気にしてねぇよ、とニカッと笑う。
「頭がちょっかい出したんだろ。🌸が謝ることなんかねぇ」ヤソップにくしゃくしゃ、と髪を撫でられた。
温かい手に、ふ、と口元が緩む。不思議と、怖くなった。
「お!笑うと可愛いな」
「ヤソップ、嫁さんに言うぞ」
あと頭にも、と言うルゥを、そんなんじゃねぇよ!とどつく。
「頭、上に運ぶから一緒にこい。ベックはいねぇから」
な、と笑うヤソップ。
よいせ、とルゥが担ぎ上げたシャンクスが、ん、と寝言を零した。
