依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第42章 1,380円の恩義
「貢ぎグセでもあるんですか?」
スーパーでの買い物と言い今回と言い、と当たり前のように支払いをするシャンクスを見上げる。
「食材も下着も、俺が言い出したことだろう」
言い出したからって全額払わなくても、と当たり前のように取り上げられるショッパーを追う。
(今度は買い出ししてからごはん作りに行こう)
店を出るとコーヒーショップの看板が目についた。
顔をあげると、バッチリ目が合う。
「飲み物買っていい?」「なにか飲むか?」
ほとんど同時に口にした言葉。数秒あいて笑い出したシャンクスにつられて笑う。
少し先のベンチに荷物を置くと、待ってろ、と髪を撫でられる。
「紅茶でいいか?」「うん」
お金、と財布を出した時にはもうそこにいなかった。
(デート、だ)
不思議な感じ、とあたりを見回す。
男女の二人連れ、家族連れ、親子連れ、友人連れ。
傍から見て、自分と彼はどう見えるのだろうか、と視線を戻すと、そこに立っているだけなのにいくつかの目線を集めている姿。
ふと、客観的に見つめて考える。
どこにいても、頭一つ、二つ分高い背。
あまり類を見ない、落ち着いた深い赤の髪。
髪を乾かした時に気付いたが、赤茶けているというよりも本当に赤で、日光にあたると艶が増してキラキラするそれは赤銅色と言う表現が一番しっくりくる。
(あれ?)
オーダーカウンターで隣り合った人と話している。
(おや?)
一人で並んでいる女性の会計も、彼がしたようだ。一緒に商品が渡されるのを待っている。
(まさかのナンパ?)
デート中に?と目線が鋭くなる。カップ2つを先に受けると、まだ提供に時間がかかるらしい彼女を置いて戻ってくる。
「ダージリンで良かったか?」
ありがとう、とカップを受け取る。
「ナンパでもした?」
両手でギュッとカップを包む。
右手のカップに口をつけ、ぱちぱちと瞬くシャンクスのブルー・グレイから目を逸らした。
「ヤキモチ焼いてくれるのか」
「そ、んなじゃ、ない」
ニヤニヤして俯く🌸の髪を撫でる。
「会社の部下だ。秘書課の新人」
ふーん、と吐息で冷ました紅茶を一口飲む。
「あつっ」
「大丈夫か?」
隣にかけて、見せてみろ、と頬を柔く掴まれる。
伏し目がちにスッ、と唇を撫でる指先にドキリとすると、チラ、と向けられた目に誂いが見えて、ふいっと目を逸らした。
✜
